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志村けん コメディアン

いい歳してやってるのがいい

志村けん一座旗揚げ

木村― 最近のテレビなんかのお笑いというのをご覧になってどう思われます?

志村― バラエティーだと、ネタをやらないじゃないですか。昔だと、「このネタが面白いこの人」っていうのがあるんだけど、いまはちょっと売れると、すぐネタやらないで普通のトークになっちゃうので、それが寂しいですね。もうちょっとネタをちゃんとやればいいなという気がしますけどね。でも、ネタをつくるのがいちばんつらいですものね。

木村― そうですね。だからどうしても他へいっちゃうんですね。

志村― 逃げちゃうんですよね、そっちへね。

木村― この頃、テレビで若手を「お笑い芸人」って言うでしょう。自分たちのことも「芸人」と言うでしょう。あれ、すごい違和感があって、少なくとも10年ぐらい下積みがあって出てきたのが芸人なんじゃないかと思うんです。軽々に「芸人」って言ってほしくないですね。「わらじ履いたか、おまえ」みたいなところがありますよね(笑)。

志村― どっちかというと、タレントっぽいですよね。確かに芸人までいっていないような気がします。

木村― 西川きよしさんは石井均さんのお弟子さんだったんですけど、あまりお腹が減ったので、師匠の目を盗んで巻き寿司を食ってて、見つかって叱られて。それ以来、あの人、巻き寿司食えないんですよ。そういう悔しいとかつらい思いをいまはしてませんもんね。

志村― 僕ら弁当もなかったし、ドリフのメンバー5人の食べ残しのラーメンを集めてなんとか食べたりしましたもんね。いま普通に食えますからね。たまに一緒に飯食ったときに、運転手のほうがいいものを食ったりする。オレ、普通のラーメン食ってるのに、「おまえ! 担担麺!?」(笑)。

木村― 志村さんは56歳だそうですけど、サラリーマンも60歳を過ぎると定年を迎えます。それ以降、もうちょっと元気に頑張れる秘訣、「人生のアフター5」を楽しむ秘訣というのを教えていただけるとありがたいんです。志村さんも50代になられてからのほうがたぶん楽しいんじゃないですか。

志村― そうですね、何か20代、30代の頃は、早く歳食いたくて。僕の場合、こういう笑いだと、若いときって、何やっても普通ですけど、いい歳してやってる、というのがいいなと思ってて、だから40後半から50過ぎたら楽しいですね。

木村― 「志村けん一座」をおやりになりましたよね。やはりああいう生の舞台に対するこだわりってありますか。

志村― 「全員集合」もそうですけど、昔からずうっと生の舞台やっていて、「だいじょうぶだぁ」というテレビ番組を4年続けてやったんですけど、やっぱり生で、実際のお客さんの前でやっていないとだめですね。

木村― テレビだけだと見えないですものね。

志村― 大事ですね。生の舞台で少し自信がついたりすると、テレビでもできるんですけど、ずうっとテレビだけやってると、「いいのかな、これ、受けてるのかな、実際に」というのがぜんぜんわからないんですね。

木村― 「志村けん一座」では、どうして藤山寛美さんの作品(「一姫二太郎三かぼちゃ」)を選ばれたんですか。

志村― 僕、寛美さんの作品は前から好きだったんですね。ビデオとか見てたんです。コントで笑わせるのは何年もずうっとやっているんですけど、少し哀愁のあるというか、笑わせて泣かせるというのが、好きなんですよね。それでいいものは、やはり誰かがやらないといけないなと思っていたんです。若いときそれはできないですから、まあ50過ぎてるから、多少寛美さんを知っている人でも許してくれるかなと思ってやってみたんです。

木村― 手応えはどうでしたか。

志村― わりと自分のなかではあったほうですね。やはり寛美さんのはちゃんとできてますよね。家族愛とかそういうものをテーマにしているんですけど。ちゃんとベースがありますから、そういう意味では楽でしたね。ただ、「なんだおまえ、いいものをむだにしやがって」って言われるのがいちばん恐かったですね。

木村― ちょうどそこのところ、大阪のコメディーの笑わせて泣かせるという部分を誰も継承していませんから。

志村― ええ、いま笑いの部分でそういうのがないのでね。

木村― 日本の喜劇王を目指して、ますます頑張っていただければ。ご活躍をお祈りしております。

〈後記〉志村さんとお会いするのは初めて。予想通り、シャイでまじめなお人柄。「扮装でもしてないと照れるんですよね……」。その言葉のままに、静かなトーンで対談が始った。とても「アイーン」をやるおじさんとも思えない。佳境に入ると、さすがに含蓄のある話が聞けた。これからもコメディアン道を全うし、藤山寛美さんの後の「喜劇王」をめざしてほしい。関西人としてはやや寂しいのだけれど……。(木村)

撮影=瀬戸正人/構成=森國次郎

木村政雄編集長 Special Interview

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