夏の終わりの昼下がり
世田谷・砧公園で愛犬と戯れる十朱幸代さん
若い! 美しい!
この日、ロシアから帰ったばかりの木村編集長
顔が赤かったのは、日焼けでしょうか……
十朱幸代 女優
最後は包容力がある人かなあ
(とあけ・ゆきよ)本名・小倉幸子。東京・日本橋生まれ。父は日本映画を代表する小津安二郎や成瀬巳喜男監督作品には欠かせない名脇役、十朱久雄。中学時代から『装苑』などの雑誌のモデルとして活躍。58年、NHKの連続ドラマ『バス通り裏』でデビュー。月曜から金曜までの毎日、午後7時15分から30分までの生放送で、63年3月まで5年間、1395回も続いた大人気番組。59年には木下恵介監督作品『惜春鳥』で映画デビュー。その後『新座頭市物語・笠間の血祭り』(西岡弘善監督、73年)、『男はつらいよ・寅次郎子守唄』(山田洋次監督、74年)など日本映画の代表作に主演。80年には『震える舌』(野村芳太郎監督)でブルーリボン主演女優賞受賞。83年の『魚影の群れ』(相米慎二監督)で漁師の妻で夫の緒方拳を捨てて逃げるという汚れ役を演じ、高く評価される。その後、『櫂』(五社英雄監督、85年)など力作が続き、『花いちもんめ』(伊藤俊也監督、85年)で再びブルーリボン主演女優賞、『日本一短い「母」への手紙』(澤井信一郎監督、95年)で日本アカデミー賞主演女優賞など数々の映画賞を受賞。舞台でも2001年度菊田一夫演劇大賞、第26回松尾芸能賞大賞などを受賞。2003年には紫綬褒章を受けている。
奈良、東京、そして芸能界へ
木村― 十朱さんは、僕が吉本興業にいたとき、唯一サインをいただいた女優さんなんです。
『櫂』という映画がありましたね、五社英雄監督の。あの映画に吉本の若い女の子が出させていただいて、それで彼女に「サインもらってきて」ってお願いしたんです。そうしたら「木村部長へ」と書いていただいたんです。
十朱― そうでしたっけ。
木村― 僕はもちろん『バス通り裏』からのファンです。僕は昭和21年生まれですから、まだ中学生のころですかね。
十朱― じゃあ戌年でしょ。うちの妹と一緒だわ。
木村― 十朱さんは、生まれは東京で、小学校3年生まで奈良にいらしたんですね。
十朱― そうなんです。父も母も東京の人で、父は演劇に夢中でしたから、戦時中は生活するのも大変だったようです。そのころ、祖父が奈良に繊維工場を持っていまして、それで疎開もかねて奈良に行ったみたいなんです。奈良に行けば芝居をやめるだろうと。
ですから、生まれたのは東京なんですけど、子どものころはほとんど奈良で過ごしたんです。周りはみんなお百姓さんで、広々としたところでほんとに野性的に育ちました。いま思えばそういう育ち方もとてもよかったなと思うんですよ、ただ都会だけで過ごしたんじゃなくてね。
木村― 近鉄奈良線の西大寺駅の近くでしたね。
十朱― ええ。2年ほど前、取材をかねて、訪ねてみたんです。子どものときに感じてた広さとか高さとかが、もうぜんぜん違う。育ったところが畑の真ん中のようなところだったんですけど、ほとんど住宅になってました。
木村― 同級生とかお会いになりました。
十朱― ええ。同級生だけでなく、近所の方々にもお目にかかりましたし、小学校の先生にもいらしていただいて、とてもお元気でした。やはり奈良は第二のふるさとですね。
木村― それから東京の赤坂に移られて、赤坂中学ご出身ですよね。
十朱― そうです。小学校のときに、目黒区洗足に越してきまして、目黒区立原町小学校から区立第九中学校に行って、中学2年の時に港区立赤坂中学に移ったんです。
そのころから、こういう活動がしたくなったんです。年頃になりまして……。
木村― やっぱりお父さんのお仕事の影響ですかね。
十朱― 好きだったんですね。奈良から出てきてますから、なんか特別にあこがれがあったみたいですね。華やかな世界に見えたんでしょうね。
ですから、学校の帰りに、よく父の仕事場に用もないのに行ったりしてました。それで「ちょっとカメラテストを受けてみない?」ということになったんです。
木村― じゃあ、ごくごく自然な形で芸能界におはいりになったということですね。
十朱― まあそれが自然なのかどうかは分からないんですけど、ただ、女優になっても、この職業が特殊な職業と思わないでこられたと思うんです。
木村― そうなんですか、かなり特殊だとは思いますが。たしかに芸能界の方であるにもかかわらず、十朱さんはあまりそれを感じさせない方ですね。
十朱― それは意識してきたつもりです。あのころの女優というのはほんと「雲の上の人」みたいな感覚だったでしょ、今の方々と違って。ですから、自分が女優として、普通に生活している人を演じるためには、できるだけ普通の生活と離れてはいけないと思っていましたね。
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