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杉野正

しなの鉄道、埼玉高速鉄道を再生させたサラリーマン社長

サラリーマンであることが立脚点だ

 「ただ、小さなことを改革していくといっても、それをシステムにしているかどうかが問題なんです。例えば、うちの会社では、部品ひとつを買うのにも僕の決裁が必要なシステムにしていて、判子を押すときに値段をチェックして、もう少し値段が下がらないかと聞く。そういうことをしないと、みんなどんどん無駄なお金を遣ってしまうんです。僕には24年間のサラリーマン経験がありますから、彼らの心がわかるんですよ。サラリーマンには、もともとコスト意識なんてない。誰かが怒らなければ、どんどんタクシーを使うようになるし、どんどん残業もやるようになる。どんなに格好いいことを言っていても、会社のお金だと思うんです。そんなサラリーマンの心がわかるから、逃げ道もどうすればいいかも、やる気がでるのはどういう状況かもわかる。「サラリーマンの心」として、これまで117項目に整理しているんです。例えば「サラリーマンは会議で本当のことを言わない」とかね(笑)。そこから、細かなマネジメントを考えているんですよね」大学卒業後、82年にユニ・チャームに入社。96年にエイチ・アイ・エスに転職、しなの鉄道、埼玉高速鉄道の社長は、同社からの出向で務めている。本当の意味での、サラリーマン社長なのである。
 「僕はエリートではないですからね。トップへ向かうためには、弱者の戦略をとるしかなかった。最初に入社したユニ・チャームは国内の売上げは97%、海外は3%だった。国内では営業マンがいて、主任、係長、課長、部長、本部長、担当役員……。いくら好成績を上げても、エリートでない限り、なかなか目立たない。ですから、海外部門を志願したんです。海外部門は、課長の上は専務でしたから、ちょっといい仕事をすれば、絶対目立つ。また、海外でも、アメリカ、ヨーロッパでなく、アジア・中東を志願したんです。そういうところで実績を残せば注目されるし、失敗したとしても大目に見てもらえる。例えば、サウジアラビアで紙おむつ工場をつくったんですが、日本人は僕1人、設計から資材調達までこなした。従業員も日本人はゼロで、国籍は22ヵ国に及んだ。そんな経験があるから、その後、旅行業、鉄道業に転職するのにも、何の躊躇もありませんでした。トライ&エラーで、前向きな失敗なら自分を高めることができると思いますからね」
 しなの鉄道、埼玉高速鉄道にも、杉野氏一人で乗り込み、再建へ目処をつけた。03年発足の産業再生機構は再生と謳いながら、実質的に債務整理がメインだったとも言われる。それに比して、杉野氏の豪腕ぶりは特筆に値するだろう。
 「どうしても、再生できないところもあります。でも、ちょっと手を加えれば何とかなる会社もたくさんある。埼玉高速鉄道は、当初の目標「償却前損益黒字」を達成する見込みがついています。ですから、今後は、本当に困っているところの再建をやりたいですね。例えば、自治体の再建にも取り組んでみたい」
 インタビューの数日後、自民党神奈川県連の要請を受け、杉野氏は来春の神奈川県知事選への出馬を表明した。生まれ育った土地で、新たな挑戦が始まる……。

取材・文=羽柴重文(編集企画室Over-All)/撮影=坂口トモユキ

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