ようこそ ゲストさん [ログイン]


トップページ > バックナンバー > フォトエッセイ > 

  • 印刷
  • 大
  • 中
  • 小

コブラ VS.ショートホープ

宮嶋茂樹(報道カメラマン)

 さてと、タバコには、もう一つ、どえらい使い道があったのである。
 今をさかのぼること9年、日本の世論を二分して陸上自衛隊が小銃かついで出かけたカンボジアのPKO(国連平和維持活動)では、なんとも意外な使われ方をしていたのであった。
 ポルポト派に地雷と現地部隊にとって脅威もいろいろあったが、一番身近な敵は、マラリアなどの風土病とそれを媒介する蚊やサソリやムカデやヘビなどであった。なかでもコブラは、もう咬まれたらシャレにならん。そのため部隊では、あらゆる血清を準備してはいたが、その他にも対毒性生物の対抗案があった。
 まずは酒である。どうせ酒を飲むならジンがいいと、まことしやかに囁かれていた。これはジンの中にマラリアの特効薬キニーネが含有されており、たとえかかっても、そのおかげで軽微で済むという理由であった。
 今一つは、タバコである。吸殻を集め、ほぐし、さらに水に溶き、天幕の周りに撒くと、コブラがその臭いを嫌がり近寄ってこないというのである。故あってタケオ基地門外で野営していた(詳細は拙著の『ああ堂々の自衛隊』を参考にされたい)。私は、派遣隊員からこのことを教えていただくや、早速実行に移し、幸いにも19日の野営中、ムカデに一度だけ襲われただけで、結局無事帰国できた。
 ジンやタバコの対毒性生物の効果に、どんな科学的根拠があるかさっぱり分からんのだが、ともかく1200人の派遣隊員と私はコブラの被害にあわずに済んだのである。要は気持の持ちようだったのかもしれない。そうして私は、こんな環境にあっても、ショートホープを口にすると落ち着くのである。
 さあ、原稿一本できたから、一服しょ。

フォトエッセイ

一覧(3件)

[ファイブエル]バックナンバー