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愛川欽也 俳優

恋する勇気を

「いまの奥さま」の話

木村― いまの奥さまと一緒になって何年ですか?

愛川― 「いまの奥さま」って、もう30年ですよ。みんな3ヵ月で別れるんだろうって言ってたけど。

木村― やっぱり共演なさったのがきっかけだったんですか。

愛川― いや……まあ何だろうね、古くから言われてることだけど、ご縁があったんでしょうねえ。

木村― なるほどね。夫婦円満の秘訣は何でしょうかね。

愛川― うちの夫婦が世間の夫婦円満の秘訣になりませんよ。うちみたいなおしゃべりが二人そろうなんてことはないですからね。

木村― でも、普通は外でしゃべる人は家でしゃべらないじゃないですか。

愛川― あっ、それウソですね。うちはもう両方しゃべる。だからね、何でこんなにしゃべるのが二人いて何ともないかというと、聞いてないからですよ。

木村― それだな、秘訣は。(笑)

愛川― そう。そうですよ、両方聞いてない。だから時々、スポッと抜けてるときがあるんですよね。

木村― ケンカにならないですか。

愛川― ケンカはバカバカしくてしないですね。ケンカするって、なんかどろどろと生々しく愛し合ってるからじゃないですかね、そういううちですよ。

木村― ケンカしなくなったらヤバイですか。

愛川― ヤバイんじゃなくて、もう割り切って、そこから卒業したんだ。僕はそう思うね。
 うち、最初からしないんだもん。だって、僕の性格なんて、この世界50年やってるんだからね、向こうは全部見抜いてますよ。

木村― お互いの性格が違うんでしょうかね?

愛川― かみさんは僕と違って勉強家なんです。とにかくいまだに学校へ行きたいんだから。で、トレーニングジムってあるでしょ、ああいうところも必ず会員になるしね。
 僕は絶対行かない。僕ね、体鍛えるの嫌い。それから学校へ行くの大嫌い。だから全然違う、性格が。あの人は勉強するのが好きですね。僕、勉強大嫌い。

人生最大のピンチ

木村― 今までで最大の人生のピンチというのはいつでしたか。

愛川― ピンチねえ……。

木村― 「まいったなぁ」というのは。

愛川― やっぱり三軒、店つぶしたときだね。島田紳助さんに言わせるとね、「ほんとに水商売下手だね」って。

木村― また何でやろうと思われたんですか。

愛川― なんか人が集まるのが好きなんだよね。

木村― お幾つぐらいのときですか。

愛川― 40になったぐらいですね。なんか人がたまって、そこで「マスター」とか「だんな」なんて言われたかったりしたのね。そんなことでは絶対商売だめだね。
 ただ、普通の人だと一軒つぶしちゃうとだいたいやめるもんらしいんだよね。まあ二軒は冗談でやる。でも三軒つぶしてね。

木村― 何屋さんだったんですか。

愛川― 最初が天ぷら屋。それから二つ目がスパゲティ。で、三つ目がわりと若い人向けにね。たこ焼きっていうのはタコしか入ってない。タコをやめて、チーズとかハムとか、クリームとかチョコレートとかを入れて、名前も僕がつけて、「アメリカンボール」。アメリカの旗のような店をつくってね。これはあっけなく終わりましたね。(笑)

木村― でもおもしろいですね。みんな成功したらつまんないですものね。

愛川― だけど木村さん、成功してたら大変ですよ。僕、天ぷら屋なんて、チェーン店にしようと思って「一号店」と書いたんです。名前も「天欽」って、古い書体でね、「創業○年」って。実は開店したその年だよ。そういうとなんか古いような気がするから。それででっかいちょうちんを浅草橋でつくらせてね。
 あれはしかしうまくいったらすごかったなあ。いまごろはもう全国にチェーン展開でさ、どこかの商社がねらってますよ。吉野屋のむこういってたんじゃないの。あとのやつは思いつきだね。ちょっと小細工で当てようという邪心があるね。発想がいじましいやね。

木村― もういまは邪心がないからいいんじゃないですか。

愛川― もう商売はないね。何でそんなにつぶしたのと言われると、簡単に言うと、合ってないんだよな、僕に。それがいちばんわかりやすいね。
 なんかあきんどの精神がないんですよね。やっぱりあきんどは真剣なんでしょうね。僕だって真剣なんだよ……だけど真剣なんだけど、どこか遊んでるんでしょうね。

木村政雄編集長 Special Interview

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