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黄昏も悪くない

 だが、私たちは本当にそんなに忙しいのだろうか。生物学者、本川達雄氏によれば、「現代日本人は、ヒトという動物が生きていくに必要な量、食物として摂取するエネルギー量の約40倍ものエネルギーを消費している」のだとか。従って「もし生理的な時間のように社会生活の時間もエネルギー消費量に比例して速くなるとすれば、我々は昔の40倍も速く生活していることになる」と言う。「ところが体の時間は変っていない。心臓は昔ながらのペースで打っている。こんなに速くなった生活のペースに、果して体が無理なくついていけるものだろうか」と、現代の危機の本質を看破している。
 考えてみれば、定年は社会生活のスピードを緩めるチャンスなのかもしれない。ヒトが人として生きていくために、速度をアジャストするために与えられた好機なのかもしれない。確かに一時は喪失感に苛まれることもあるだろう。
 黄昏とは、そういう状態をさすのかもしれない。夕刻、人の顔が見分けにくく、「誰だあれは」という意味で、「誰そ彼(たそかれ)」と言ったことに由来するこの言葉を、我々はともすれば否定的に使いがちである。勢いを失う頃とか、人生の盛りを過ぎた年代という風に。
 だが、明るいことが果して快適なのだろうか? 子供の頃、暮れ残る町で母に叱られつついつまでも遊んでいた記憶は今も懐かしく思い出される。京都の街を灯籠の灯でともす「花灯籠」のイベントは多くの観光客の目を慰めている。一流ホテルの玄関もやや暗め。その方がなじみ客には快いからである。ルクス(照度)を落とすことで、むしろ快適さを取り戻せるかもしれない。そう考えると黄昏というのもそんなに悪くない。いっそみんなで「黄昏のビギン」でも口ずさんでみますかね。

5l世代へ 木村政雄の発言!

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