02年4月の部制開始と同時に、滝沢村は「行政経営モデル」の構築に着手した。アセスメントで浮上してきた要改善事項を解消するためには、理念に基づいた行政経営モデルが不可欠となるからだった。
「企業に経営理念が必要なのと同じです。地方分権が進むなか、行政にも理念がなければ、淘汰される可能性も高い」
この夏、北海道夕張市が「財政再建団体入り宣言」を行ったが、分権の一方、地方自治体には破綻のリスクも負わされるようになってきている。そんななか、明確な理念なくして、将来はないと柳村氏はいちはやく見抜いていたのだ。02年11月、無投票で再選。同月、「行政経営理念」を制定、発表した。この理念には、「村は経営体であり、行政の目標は顧客=村民が求める「幸せ地域社会」の実現である」――就任以来、柳村氏が職員たちに熱く語ってきた滝沢村"経営"の核心がある。そして、地方分権に対応した行政運営の改革の方向、役場職員の行動規範が明記されている。
「理念をもとに行政経営モデルとなる、ミッション、ドメインを役場全体、部署ごとに細かく考えていった(ミッションとは行政の使命、ドメインとは将来、住民やNPO、企業と協働で地域づくりをする際の行政領域を意味する)。みんな日常業務をこなしながら、ボランティアで頑張ってくれました」
その概要は滝沢村ホームページ「行政経営」コーナーで公開されているが、シンクタンクが作成したと見紛うばかりの巧緻にして精妙な出来映えである。それはその後、練り上げられた「第五次滝沢村総合計画 前期基本計画―行政戦略計画―」も同様だ。05年度から14年度までの10ヵ年計画で、将来の基本構想、基本計画、実行計画で構成。基本構想には、目標となる47の「最適化条件」と、達成度を計る41の「めざそう値」を明示。例えば最適化条件「心身ともに元気で暮らせる」に対し、「自分が心身共に元気と感じているひとの割合」が現状56.3%で、めざそう値が5年後60%、10年後65%という具合。住民のヒアリングをもとに立案された計画である。
「今年から住民の定点観測が始まりました。毎年、調査をするんですが、そこから目標、目標数値をより明瞭にしていきたい」
同計画は村議会で議決され、昨年度からスタート。滝沢村NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)が本格的に始まった。後顧の憂いなく後進に道を譲る柳村氏だが、退任後の未来図は? まだ56歳、だ。
「休んでから考える。ただ、食っていけないから、何か仕事をするだろうね(笑)」
11月12日に投開票された村長選では、柳村氏が推す候補が惜敗したが、理念は継承されていくだろう――今後も挑戦を続ける柳村氏と滝沢村から、これからも目を離せない。
取材・文・撮影=羽柴重文(編集企画室Over-All)
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