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林文子 ダイエー会長兼CEO

困難だから燃える!
「トップは火中の栗を拾うのが使命」

火中の栗を拾うのは経営者の責任

 これまで任された仕事で、林さんは驚異的な実績を残してきた。93年、BMW東京の支店長となった林さんは、その店を全国の販売店のトップにおしあげ、次の店でも同様の成果を収めた。99年、業績の落ち込んでいたフォルクスワーゲン東京にスカウトされ社長に就任したのちも、4年間で、総売上、販売台数とも倍増させた。そして03年、かつて自分から売り込んで入社したBMW東京に、今度は社長として迎えられる。
 こうしてみると、会社の枢要なポストに就いても、林さんはそこに安住することがない。むしろ、険しく、さまざまな困難が待ち受ける職場を選択し、あえて火中の栗を拾い続けているようにも思える。
 「企業のトップは、大きな力を与えられる分、部下のために尽くす責任があります。企業の窮境を救うために、あえて火中の栗を拾うのが使命で、そうでなければいる意味がないわけです。
 もちろん、職場を移る際には、それまでの仕事場や仲間への愛着はあり、後ろ髪引かれる思いは常にあります。その上、お誘いいただく企業にはさまざまな困難が待ち受けているわけですから。でも、恐いもの見たさとでもいうのか……(笑)、この幕の向こうには何が待っているのかしら、自分はそこでどんな風に変わることができるのかしら、そんな好奇心、成長願望がいつもあるんですね」。
 とはいえ、今回は国民の税金を使っての巨大企業の建て直しである。店舗・人員整理など、苦渋の選択を迫られる場面は少なくないはずだ。従業員数からいっても、BMW東京での350人から一気に5万人近い規模である。その重責を担うことに、迷いはなかったのだろうか。
 「私が会長職をお引き受けしたのには大きく二つの理由があります。一つは、私がずっと自動車という小売業の現場で22年間お客様と接してきたという経験が、ここで生かせると思ったからです。私は常々、販売は『おもてなし』であるといってきましたが、自分の持ち場ではそれを伝えられても、企業理念としてかかげる立場にはありませんでした。ダイエーがスーパーという原点に立ち返ろうとしている今こそ、私の考え方を生かせると思ったのです。
 それともう一つは女性である私にチャンスをいただいたということです。私は18歳からずっと仕事を続けてきましたが、当時、企業で働く女性はお茶くみやコピーとりの仕事がほとんどでしたし、何年か勤めて結婚退職するのがあたりまえの時代でした。それが今、ようやく女性の私に声をかけていただけるようになったのです。主婦としての視点も役立つと思いますし、あとに続く女性の励みになればという思いがありました」。
 終始穏やかな語り口だが、林さんの表情は、話し込んでいるうちに真剣さを帯びてくる。が、林さんは一息つくと、「私、話に夢中になると怖い顔になるでしょ。みなさんには、笑顔で接客に努めましょうといっているのに」といって笑った。自分を客観的に見ることができる人である。そうであればこそ、その場の空気を読み、的確な判断を下すことができる。
 林さんが店内を歩いていると、店員ばかりでなく、買い物客からも「こんにちは」「がんばってください」と声をかけられるが、そのほとんどが女性。「ファンが多いですね」というと、「みなさん、ダイエーのファンなんです」。
 周囲の人がみな、エールを送りたい気持ちにかられるのも無理はない。

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