林さんは、まさに団塊世代のトップにあたるわけだが、戦後民主主義の洗礼を受けた仲間として、同世代はその目にどのように映っているのだろうか。
「厳しい競争を戦いぬき、会社のために貢献してきた団塊の世代はたくましいけれど、鉛筆をナイフで削るようなアナログのなかで生きてきたわけで、IT社会では疎外感を味わっている世代でもあります。
でも、殺伐とした事件が日常的に起こるようなこの世の中にあって、このアナログの発想こそがいま求められているのではないかと思います。そういう感覚を呼び戻したいですね。それを伝えられるのは、まさに団塊の世代しかいません」。
林さんは自身を、「人からエネルギーをもらい、人に癒されるタイプ」という。とことん人間が好きな林さんは、これからの世代への教育問題にも強い関心を寄せる。
「NPOなどを立ち上げ、教育問題などに取り組む人が団塊世代に多いのは喜ぶべきことだと思います。男女共働にも慣れている団塊世代は、今こそ連帯してもらいたい。できれば退職前から地域社会に入り込んで、力になっていただきたいですね」
険しい道をひた走りながらも、林さんは50代の半ばあたりから、ある思いにかられるようになった。
「自分が死ぬときに、自分の人生は人のために少しでもお役に立てた、意義があった、そう思える最期でありたいということです」。
白いテープを切るその瞬間まで、林さんはきっと、全力で走り続けるのだろう。
取材のお礼をいい、頭を上げたとき、林さんの方がまだお辞儀をされていたので、あわてて頭を下げなおした。重く実って頭を垂れる稲穂を思いだした。
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