木村― 「宝塚音楽学校」は予科、本科あわせて二年間ですが、途中でくじけたりとかはしませんでしたか。
鳳―― 私らの頃はくじけなかったですよ。みんな歯を食いしばって。そんなもんだって思ってたから。それに私の場合は親が厳しかったから。宝塚音楽学校の先輩のほうがまだやさしかった。
木村― あっ、そうなんですか。
鳳―― もう親が厳しかった。革のスリッパでおしりパンパーンってたたかれた。どれだけ宝塚の音楽学校で先輩からイジメに遇っても、全然怖くなかった。親のほうがもっと怖い。
木村― どんなイジメするんですかね、宝塚の人って。
鳳―― 真っ白な王子さまの衣装にタールがついてたり、靴底の革がビーンとめくれてたりとか、事務所へ走っていってセロテープをガアッと巻いて、パアッと出たりしました。私、先輩より早く役についたりしたから。でも、もし逆だったら「あたしもするやろなあ……」とか思って、全然何ともなかった。ほんとおおらかでしたよ。親のほうが怖かったし。
木村― 塩屋から宝塚まで通ってたんですか。けっこう時間かかりますよね。
鳳―― 通ってました。宝塚に入った途端、ものすごい人たちばっかりで、私、ピアノの鍵盤の「ド」がどこにあるかわからないのに、みんなブワーッとショパンなんて弾いてるの。だから私はスターには絶対ならないと思った。塩屋から毎日国電に乗って宝塚に通ってるのは私だけで、毎日遅刻して「電車が遅れました」なんて、いっつも遅刻してた。だって、スターになる努力してなかったから。
木村― 角っこも直角に曲がらなきゃいけないとか、宝塚にはいろいろルールがあるんでしょ。
鳳―― そうそう。私なんか悪目立ちしてて、いつも先輩に、「ちょっとお部屋へいらっしゃい、座布団持ってきなさい」って呼ばれて。
なんやわけわからんのに怒られてましたよ。
でも、親のほうが怖かったから全然平気だった。
木村― 同期はどなたかいらっしゃいますか。
鳳―― 汀夏子さんや大原ますみさんですね。
木村― 男役と女役というのは、自分の意志ではないんですか。
鳳―― ええ、違います。いまは知りませんけど、私の頃は初舞台のときに、背の高い順にずらーっと一列に並ばせられて、真ん中で「ここから男役、ここから女役」って決められちゃうの。私は170センチぐらいで、もう上から二番目ぐらいに並んでましたから、絶対男役だと。
木村― でも、やっぱり男役が花じゃないですか、宝塚というのは。
鳳―― そうですね。男役と女役とがちょうど切られたあたりで泣くんですね。私は男がやりたい、私は女がやりたいって。私の時はちょうど汀夏子さんと大原ますみさんあたりが切れ目でしたね。
木村― くやしい思いをしたという経験はありますか。例えば、私のほうが優れていると思ったのに、他の人にいい役がついてしまったとか。
鳳―― 私は全然優れていると思ってなかった、なんの実力もなくて。ただ、同期生のなかですごくいい役がついたんですよ。なんか悪目立ちしてたから、けっこういいところに入れてもらったみたいですね。
木村― 抜擢されたんですね。どなたかが、若い鳳さんを見て、この子は将来背負って立つとおっしゃったんでしょ。
鳳―― ええ、菊田一夫先生。「これからの宝塚はあの子が背負うよ」と言っていただいて。
木村― 見抜いてらっしゃった。それぐらい光ってたんでしょうね、きっと。
鳳―― いや、目立ってたんです。
木村― 目立つのが好きだったら、どうして吉本を目指さなかったんですかね(笑)。
鳳―― 絶対吉本よ、私って。美貌とね、スタイルが邪魔してるだけ(笑)。
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