この間府中の東京競馬場へ行った。競馬にはぜんぜん詳しくないが、ディープインパクトは知っている。一昨年かその前、三冠達成かと騒がれていて、そのレースをテレビで見た。勝負というのは好きだから、テレビのスポーツ場面というのはよく見る。その時は後ろの方で力をためていたディープインパクトが、直線コースでスピードを解禁されて、ギュイーン、と音を発するような勢いでもってぐんぐんトップに立って、駆け抜けた。
速球投手の凄い人は、球が手許で伸びるという。いわゆるホップするというやつ。阪神の藤川投手などがそういう球だと思うが、それを連想するようなディープインパクトの走りだった。なるほど、みんなこれに痺れるのか、と思った。速いといってもスピードガン的な、数字上のことだけではなく、その勢いのようなものに痺れるのだろう。
ぼくは競馬はやらない。だからぜんぜん知識はない。はじめて競馬場へ行ったのは、もう20年以上も前になるなあ……、川崎競馬場へ行った。競馬をしに行ったのではなく、自分の知らない世界を見物に行ったのだ。
たしかにまったく知らない世界で、何か熱いけどすさんだような空気があって、緊張した。何だか全員がすってんてんにすってしまった人に見えた。金が落ちていたらすぐ拾ってポケットに入れる人に見えた。本当はそんなことはないのだろうが、ぼくは先入観が強いので、とにかくそういうイメージばかりが舞い込んできた。
紙屑とかタバコの吸殻とか、ゴミの散らばり方が凄かった。とにかくそこいら辺にばらばら捨ててある。ぼくは真面目なたちだから、鼻紙か何か、紙屑を捨てようと辺りを探したが、屑篭がない。とにかくどこにでもそこら辺にぽいぽいだ。そうか、ここではいちいちそんな屑篭などに捨てるものではないんだと気がついた。かえって真面目に屑篭を探したりする方が、この場所には不釣合いだ。そう気がついて、ぼくもいらなくなった自分の屑紙を、ぽいという感じでそこいら辺に荒くれた様子で捨てた。世の中は不満だらけだという感じで肩を怒らせて、ふざけんじゃねえ、という顔をして、わざとぽいと捨てたのだった。
人を感動させる馬
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