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角川春樹 出版人・映画製作者

生涯現役の不良

不良を貫いて、途中で死んでやろう

木村― いままでも十分素敵な人生を送ってこられたと思うんですが、これから先、なにをテーマにしていきたいですか。

角川― なにをテーマというよりも、要するに好きなことをやればいいんだっていつも思ってるんですよ。だから、なにをすべきかというのは、その時その時で突然のごとくわいてくるんです。やりたいこともあれば、流れに身をまかせるというのもありますね。
 それは仕事の面ではかなりありますよ。3月3日にモンゴルとの合作映画『蒼き狼』を公開します。そして『椿三十郎』の製作が始まりました。これは黒澤明監督、三船敏郎主演の傑作時代劇のリメイクです。この二つが一時ダブるかもしれないと思った。でも、ダブってもかまわないと思ったんです。それはそういう流れだから、かまわないんだと。
 いま私の生活は半分がビジネス、もう半分は主に執筆です。「魂の一行詩」という形で運動をやってましてね、その執筆時間だとか、尾道大学に客員教授で赴任して教えてるんですよ。そういう時間が半分を占めてる。
 残り半分がビジネスなんですが、そのビジネスも、結局好きなことしかやってないんですね。そうすると、多少疲労はあるかもしれないが、精神的な疲労はあんまりないですよね。
 つらいのは結局、いやなことを耐えるからです。獄中なんかそうですよ。でも大半は、そういうことをやむを得ずやっていなきゃいけないという人なんですよ。上司を選べないし、仲間も選べない。そういうなかで自分の好きなものをやっていくということは、ある面で覚悟が必要なんですね、軋轢も含めて。

木村― それはもう本当に……僕も会社をやめて楽になったと思います、いやなことをやってませんから。まったく同感でございますね。

角川― 結局好きなことだったら、自分の好きなことを選べば、かなり耐えられますよね。耐えるというか、納得がいくといったほうがいいでしょうね。

木村― 俳句と呼んでいいのか、一行詩と呼んでいいのかわからないのですが、いまの俳壇の人はいかに書くかということにとらわれすぎているとおっしゃっていましたね。それはなにを書くかということを忘れているということですね。

角川― そう、技術論ですよね。技術論だけ追っかけたって意味がない。要は、なにを詠むかということです。詩人、俳人のほとんどが、生き方を見てもチャッチイんですよねえ、そんな人間が深い句を詠めるわけがないんですよ。なにを詠むかの「なにを」がないから技術論に走る。

木村― 詩人、俳人に限らず、生き方ですね。

角川― そうですよ。もうほとんど俳人や詩人は逃亡者みたいなものですからね。しかし「角川さんみたいな詩人は例外です」といわれるんです。とにかくぜんぜん逃げない、逃亡しない。みんなほとんど社会から逃亡して片隅でやってる。それも、いまはもっともっと堕落して、サラリーマン詩人になってるんですよね。

木村― 昨年秋に出たのはどういう本ですか。

角川― 『朝日のあたる家』(思潮社)という詩集です。詩人として一行詩を書くということだけじゃなくて、私は自分の生き方として、人生を一行の詩にしようと思ってるんです。自分の人生そのものを一行の詩にしようと。その場合には、例えばあらゆるビジネスを捨てて、一行詩を書くことに専念するのが一行詩とは思わないんです。そうではなくて、生涯現役の不良。それは仕事も含めて不良を貫いて、途中で死んでやろうと。完結して死ぬことはあり得ない。自分ではそう思ってます。だから、ビジネスをまったく離れるということは永遠にないと思いますね。

木村― 一行の詩に凝縮しようと思うと、自分の人生をもう一回見つめなおせますよね。

角川― そうです。その点、やっぱり句読点じゃないが、がっちり刑務所というのはありますからね、「光と影」の影がね。

木村政雄編集長 Special Interview

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