テレビCMに大手を振って出てくるのが、もう一つ、生命保険だ。
むかし駅まで行く一本道の脇に、生命保険会社の広大なグラウンドがあった。
凄いなあ、と見て通っていた。
何でそんなに儲けているんだろうかと思った。
生命保険会社は何も造っていない。金を預かって書類をあれこれ書いて、そんなやりとりだけでこんな広大な資産を築くというのは、どこかおかしい、と思った。
死んだら保険金が下りるということで、怪しげな事件もたくさん起きる。
病気になったら医療費が出るというが、ほとんど出ない。
複雑な書類の中に、いろんな条件が小さな字で隠れていて、いざというときにそれが大きく立ちはだかる。
でも日本人は昔から何故か生命保険には良く入る。
たいてい家族とか、親戚とか、友人関係をつたってのことで、人間関係に弱いのだろう。
人情話にも弱い。
振り込め詐欺がこんなに多発する甘さに驚いてしまうが、何か共通する体質があるのではないか。
物を造らない会社は、いまは全部怪しげに見える。
○○ファンドもそうだ。
何も造ってもいない会社がこんなに儲けてふくれ上がる世の中は、どこかおかしい。
株をやっている、というだけでも昔は白い目で見られた。
それでも株で儲けたい人は、陰でこそこそやっていたものだ。
とにかく何も造らずに儲けている会社は、みんな怪しいと思う。
もちろんサービス業は別だ。
何も造らなくても、働いている。
人材派遣的な話は、プロ野球から始る。
昔は選手の移籍自体が、驚きをもって報じられた。
生涯一チームじゃないけど、チームに対する郷土愛的なものが強くあって、そこを出て、金に買われて別のチームに行くのは、浅ましいことだと見られた。
だからアメリカ・メジャーリーグで、金次第でどこへでも移籍するやり方には、目を丸くした。
でも日本はアメリカをお手本とするから、いまは日本もそうなった。
終身雇用が古臭いものとされ、能力次第、自由に転職の人材派遣が広まってきたのは、このアメリカ・メジャーリーグの影響も強いのかもしれない。
お陰で日本の底辺での未来不安はいっそう広がった。
膨張するピンハネ世界
赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)1937年、横浜生まれ。『父が消えた』で芥川賞受賞。『ふしぎなお金』『目玉の学校』など、著者ならではの、まともに考えれば考えるほど不可思議な人間社会の謎を探究する目からウロコの名著多数。
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