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むかしは子供が年金だった

 このことでは、いつも良い人と悪い人の問題を考える。世の中には良い人と悪い人がいるが、一人の人の人生時間の中でも、良い人の時と悪い人の時とあるものだ。ある時ある出来事から良い人になり、そのままいくかと思われても、周りに悪い人がいて、またまた悪い人に染まっていったりする。
 そういう波があるとき偶然にも一致して、ある一瞬世の中の全部の人が揃って良い人になる時があったら、そのまま平和な世の中になっていくのかもしれないけれど、なかなかそういうことにはなりにくい。たいていは良い人と悪い人がばらばらに散在している。
 ということで、全人類が足並みを揃えて少子化に向うことは難しそうである。
 もう一つ、いまは年金問題というのがある。これもぼくにはあまりなじみがない。
 むかし西洋の探偵小説を読んでいて、年金生活者という言葉が出てきて、何だかよくわからなかった。学生のころだから、もう50年ほども前の話。そのころの日本では年金といってもぴんとはこなかった。軍人恩給というのがあって、それはまあ何となくわかったが、年金生活者という言葉が、どういう仕組みになっているのか、よくわからない。
 西洋の探偵小説では執事というのも出てくる。邸宅というものがあって、その中に小間使いとか爺やとか婆やとか、庭番とか、車夫とかあって、執事というのは中でもいちばん偉そうだ。もちろんご主人様がいちばん偉いのだけど、執事もちゃんとネクタイをして背広を着て、負けずに偉そうだ。
 その執事はともかく、年金生活者という白髪の老人みたいなのがいて、これがどう生活しているのかわからず、不思議だった。
 いまは年金問題が日本でもがんがんいわれていて、わからない人なんていない。将来はその負担が若者の肩にのしかかってくるといわれて、若者だって知っている。世の中、変るものだ。
 で、年金制度の充実が叫ばれているわけだが、しかし、と友人のMさんがいった。年金制度を充実させるほど、少子化は進むね、というのである。

赤瀬川源平 世相真面目にななめ読み

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