
北海道。
真っ白雪のニセコに行ってきた。なにしに行ったかって?
むろんスキーだ。なんと16年ぶり。16年前も17年ぶりだから、正味、33年間のブランクである。
御歳58歳。友人からは無謀だと言われ、出版社の担当編集者からは「足はいくら折ってもかまいませんが、腕だけは守ってください」と、原稿書きだけを気遣う、氷のような励まし。
目的地へは、千歳空港からバスで約2時間半である。近づくにしたがって、上手く曲がれるだろうか? 滑れるだろうか? いや、せめて転ばずに歩きたい、とハードルはだんだん下ってゆく。
ホテルに着くや否や、スキーをレンタル。
唖然! なんだこの短さは……。
かつてスキーの長さは、自分の背丈+15センチと相場は決まっていたではないか。曲芸スキーじゃあるまいし、違和感あるなあ……。
スキー靴の方はまったく進化せず、マジンガーZ状態。しかし、なんでもっと歩きやすくならないんだと思いつつ、バッコン、バッコンと歩いていざゲレンデへ。
正味33年ぶりのリフトは、怖かった。高所恐怖症がますます、ひどくなっているらしい。だが、近ごろ前立腺肥大気味なのに、ちびる気配はない(関係ないか)。
山頂からの眺めはすばらしく、大自然のパノラマが永遠に広がっているが、強烈な寒気が身を包む。
コチコチになりながらナナメにスタート。いわゆる「斜滑降」……おお、滑れた! 足をハの字に広げて、ボーゲン――おお、曲がれた!
と、その時だった。
親友の牧師が、視界の端を華麗に滑り抜けたのである。加治より5歳年上なのだが、加治のへっぴり腰を尻目に、あれよあれよという間に、トニー・ザイラーもかくやと思うほど上手い。なに、トニー・ザイラーって誰かって? 『白銀は招くよ』の……まあ誰だっていい。
むっと来た。北海道は加治の生まれ故郷だ。なんで牧師が……納得がいかない。ウエールデンくらいできる。あっ、このウエールデンという単語だって33年ぶりになんなく思い出したくらいだから、スキーだってなんなく思い出せる――破れかぶれ、自爆覚悟の突撃!
足の底から伝わる雪の感触! アレレ! 上手い! ということで、なんと一瞬にして昔取った杵柄が戻ったのである。
日頃のヨガと瞑想のせいかしらん。2日滑って転んだのは一度だけ。しかし、転んでもただでは起きない。しっかりと儲け話を掴んでいたのだ。
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