木村― それで「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」を結成するわけですね。
宇崎― 新しいプロダクションの6組のバンドも、クリスマスなんかになると、仕事がどんどんきて、満タンになるんですよ。仕事を断るのはもったいないということで、「お前、誰か集めてやれ」といわれて、イベントの仕事で知り合った、後のダウン・タウンのリードギターになる和田(靜男)クンに相談して結成したのが「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」なんです。
木村― マネージャーからアーティストになったわけですけど、そういう逆の立場になったときに、どうでしたか?
宇崎― マネージャーをやっていたときは、相当苦労しましたから、マネージャーにはわがまま言うまいとは思ってたんですけど、そもそもマネージャーがいなかった(笑)。結局両方やらなければならなかった。他のメンバーは7歳も若いんです。彼らを引っ張っていくためには、肩で風を切ってないとならないし……何かものすごく矛盾しているんですけれどもね。
木村― 両方わかるというのは、つらいかもしれませんね。いっそわからないほうがいいですよね。
宇崎― そう思いましたね。芸能界というのは、挨拶がきちんとできないといけない。ところが売れてから、テレビの歌番組なんかに行くと、向こうから挨拶されるまで知らんぷりしていました。マネージャーとしての僕は心のなかで、「すみません」と(笑)。
木村― 宇崎さんはちゃんとわかっていらしたんですね。
宇崎― みんなが「自分たちは誰かのおかげで売れたわけではない、実力だ」と突っ張る気持ちも、僕にはわかるんです。でも、くだらない突っ張り方をしていた。例えばオープニングで手を振る振り付けを「ロックじゃやんねえよ」って、やんなかったりとか。「本当はこうあるべきだ」という大人の社会と、芸能界という実力の世界。自分のなかで、この二つと戦ってましたね。そういうことを何年間か繰り返していました。
木村― 「ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンド」に改名したのは、どうしてですか。
宇崎― 僕らの時代はシングル盤100万枚いくのがすごいことで、そうするとアルバムではいろいろな好きな楽曲に挑戦できた時代なんです。5年くらいダウン・タウンをやっていて、あちこちツアーに行って、でもアルバム曲をやっても受けない、「スモーキン・ブギ」なんかをやると受ける。それで、もう「スモーキン・ブギ」を歌いたくないというところまできてた。そこで、ツアーはどこでも満杯だけれど、みんなが知っている曲を全部捨てたら、どうなるんだろうと思ったんです。それでいままでの曲を全部やめて、とんでもないアルバムを出してしまったんですよ。自主制作盤をね。
木村― すごい! 思い切ったトライじゃないですか。周りは、驚いたでしょう。「何のために、そういうことをするの?」と。
宇崎― キーボードの千野(秀一)クンが「それはいい」って、ものすごく賛成してくれた。それと、自分が社長をやっていたので、みんなが食えなくなることは絶対ないからということで、やったんですけれどもね……忘れもしないんですが、琵琶湖でやった「1万人コンサート」には25人しかいませんでした。
「リハ(ーサル)やっているの?」と聞いたら、「もう、オープンしています」と。僕らがステージに上がったときは、25人でしたね。後ろに売店があったので、自分の金でビールを25本買って、「すみません」とみんなにビールを配って、ロックンロールをぐんぐんと1時間半くらいやりましたけれどもね。「オレは、とんでもない間違いをしてしまったかなあ」と思いました(笑)。
木村― でも、もう後にはひけませんよね。
宇崎― ひけませんよね。ですから、トレーラーにPA(音響装置)を積んで、商店街の人たちに「ここの路上でやってもいいですか?」とお断りしてやりましたよ。グワーンとかやると、必ず警察がやってきて、始末書を書けと。何枚、始末書を書いたことか(笑)。
そういうふうに、何と言うんでしょうかね、尖っていたというか、どこか気持ちが殺伐としていたんでしょうね。
木村― このままずっと居心地のいいところにいると、よくないと思ったんですね。
宇崎― そういう感じですね。「このままいけば本当にみんな家が建つな」と。だから、「ダウンタウンが永遠に不滅だなんてことはない! 一度壊すぞ!」と。
木村― それは宇崎さんが何歳くらいのときですか?
宇崎― えー、1980年ですから、33、34歳ですかね。
木村― なるほどね。そのへんが分かれ目になるのかもしれませんね。人間としてのね。でも、ずいぶん思い切ったことをなされましたね。僕らはなかなかそういうことはできない。ぬるま湯に浸りきってしまいますよ。でも、戦っていますよね。どこかで、世の中の仕組みとか、既存のものとかと。
宇崎― いやあ、自分では戦っている意識はないんですよ。
木村― ロックというのは、そういうことでしょう。ロックの精神というのは。
宇崎― 何かに反抗しているんではなくて、どこかでひとつの仕組みのなかに取り込まれたくない、と思っているんですね。
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