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宇崎竜童 ミュージシャン

婦唱夫随

「妻の背中を見て歩いている」

木村― 宇崎さんは、いろんな歌手の方々に楽曲を提供されてますけど、とくに山口百恵さんには多くの曲を提供されました。百恵さんという人は、どんな人でしたか。

宇崎― 当時の百恵さんは、すごいエネルギッシュだなという印象ですね。当時、「赤いシリーズ」というテレビドラマを撮っていて、その後夜11時くらいから午前3時くらいまでの間に、完璧に歌い込んで、即録れてしまうんですよ。「そこはこういうふうにしてね」と注文を出すと、指摘したところを注文通り歌うだけでなく、頭からその箇所までも完璧に歌って、すごいですよ。もうひとつ、自分で歌ったデモテープというのをつくって、お渡しするんだけれど、他の歌手の方々は、どこか僕の歌い方に似てしまうんですよ。でも、彼女のは似てないんです。例えば「横須賀ストーリー」の「♪これっきりこれっきり」も、僕のはもっとギミックに歌っているんです。でも、彼女は、自分の身体を通して、心を通して、歌っているからね。百恵の歌になっている。それは、やはり天才的なものを持っている人だと思いました。

木村― 単なるアイドルとは違ったわけですね。

宇崎― そうですね。68曲ばかり、書かせてもらったんでね。引退するまでに。

木村― 68曲ばかりって(笑)。

宇崎― ほとんど個人的なつながりはないんです。いつも距離があって、1回だけ「ディスコ行きませんか」って、誘われたんですけれどもね。そのとき、仕事があって、行けなくて残念でした。引退すると話を聞いたときに、さびしいという思いと、何かほっとした思いがありました。
木村― 宇崎さんといえば、一番、大事なことを聞かなければならないですよね。阿木燿子さん。どこで、知り合われたんですか?

宇崎― 大学へ入ったら、すぐに軽音楽クラブへ入っちゃったんですよ。入ったら、男ばっかりのクラブだから、女の子を勧誘しろということになって、「お前が勧誘しろ」と(笑)。そんなんで、勧誘した最初の子が、ヨメだったんです。

木村― ああ、そうなんですか。

宇崎― それでまあ、同級生ってことで、いろいろミーティングとか、合宿とか……、とやっているうちに、「どうもこの人が自分のヨメになる人じゃないの」と思って、ある日、「渋谷で会いたいんだけれど」と電話をしたんです。いまはなくなってしまった東急文化会館の前で蘆のようにビル風に揺られながら待っている僕を見て、「何を立っているんだろう、一人で」と思ったそうです。向こうはミーティングだと思ったらしいんですね。それが、最初のデートだったんですよ。それで、3回目のデートで、ずっと我慢していたことを口にしたんです――「あなたは、どうも、僕と結婚をすることになっているようだけど」と(笑)。同じようなことを、ほとんど毎日言っていたんです。8年目に、「そろそろ……」と親同士が言い出して、じゃあ結納という話になって、何とかヨメにくることになったんです。

木村― 奥さんは最初から、詞を書いてらしたんですか。

宇崎― 書いてないです。僕が詞も書いていたんですけれど、やっぱり限度があるんですね。それで周りにいる同級生、先輩、家族……みんなに「詞を書いて」と言っていた(笑)。同級生の彼女にも頼んだら、書いてきてくれたんですね。それが「花だ、風だ、雲だ」という当時のカレッジフォークみたいのじゃなくって、「骨まで愛して」みたいな詞だったんですよ。それが面白くて、こんな詞を書くのは何かあるなと思って、それでアマチュア時代に60曲くらい書いてもらいました。

木村― なるほどね。奥さんが作詞家になるきっかけをご主人がつくられたというわけですね。同じ芸能界にいて、内情がわかっちゃうと、困ることもあるんじゃないですか。

宇崎― いま同じ会社でやっていますからね。スケジュールも全部わかってしまう。
 彼女は自分がこうしたいと思ったときに、「どうかしら?」ときいてくるんです。僕は「ああ、いいんじゃない」って。去年、彼女が映画監督(『TANNKA 短歌』)をやったときも、そんなふうにしてやったんです。

木村― 映画の最中は、もう夫婦というわけではないでしょうね。

宇崎― はい。もうクランクインする前に、「あなたは今日から、在宅単身赴任ですから」と(笑)。僕は朝飯と夕飯は、ヨメがつくったものを食うんです。それが、ダメということは、一人で生活をしろということですね。ですから、牛丼とかカレーとかのレトルト食品ばっかで、3キロ肥りましたからね(笑)。

木村― 肥りましたか。でも、宇崎さんがスーパーで買い物する姿とか、見たいですね(笑)。

宇崎― 僕は自分で勝手に決めてしまうことが多かったんです。でもここ10年くらいは聞くようになりましたね。どちらかを選ばなければならないときに、彼女に聞くと、だいたい自分が思っていることと逆なことを言うんですよね。それが、たいてい、正しいんですね(笑)。親父が生きていたころは、親父の背中を見て歩いてきたような気がするんですが、親父が死んでからは、妻の背中を見て歩いているようですね。

木村政雄編集長 Special Interview

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