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宇崎竜童 ミュージシャン

婦唱夫随

「やさしいふりして有無を言わせない」

木村― 最近のお仕事のお話をうかがいたいんですけれど、NHKの「ハゲタカ」を見ました。なかなかいいドラマですね。

宇崎― 僕は2回しか出演しなかったんですけども、丁寧につくってある脚本だなと思ったんでお引き受けしたんですよ。

木村― 宇崎さんだと、もっとカッコよく立ち向かって、というイメージなんですけども。

宇崎― 例えば女性にもてる役とか、あからさまにカッコいい役とか、お話がくると断るようにしてます。カッコいいことはカッコ悪いなあと、どこかで思ってるんで。自分のなかで、ある意味で新しいこと、例えば情けない役とかやってみたいなと思って。やっぱりそっちのほうに心が動かされるんです。

木村― それは、カッコがいいから、逆にそういう役をやりたいんじゃないですか。普通、情けない人間だとカッコいい役をやりたがりますよね。

宇崎― ウーン、まあみなさん、いろんなイメージをお持ちなんですけど、僕のなかではどれだけ仕事が楽しめるか、どれぐらいスタッフと仲よくなれるか、要するに、面白い現場にいればいいということなんです。役者じゃないし、アルバイトというか道楽みたいなものですから、生き生きしている現場で一緒にいることの楽しさですね。

木村― 先ほどの「ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンド」のときもそうですけども、あるものに安住しないで、新しいことに挑戦するというのが昔から好きなんですね。

宇崎― みなさんがもってくださるイメージというのは、とてもありがたいんですけど、ひとつのイメージにはまり込みたくないですね。それで、自分はこの場所に、いまいられないなとか、この音はもう出せないなとか、一度感じると、ピュッとはみ出していくんです。結果的に、ファンの方を裏切ってしまうことになるかもしれないですけど。まあ、やっぱり基本的に自己中心的な人間だなとは思います。お客さんのこと考えたら、決してやらないだろうなって。

木村― 映画では、『オリヲン座からの招待状』にご出演なさってますね。

宇崎― これは浅田次郎さんの原作で、宮沢りえさんのだんな役、映画館の館主の役です。将棋を指してる相手が僕に向かって、「もう厄年過ぎたでしょ」っていうセリフがあるんです。「ああ、なんにもなかった……」って答えるんですから、43か44歳の役。病気で死ぬんですよ。だからね、老けててもいいって言われた。そんなバカなって思ったけど、まあいいかと思って(笑)。宮沢りえさんと仕事したいなと思っていたし。

木村― それから舞台では、蜷川幸雄さん演出の『藪原検校』の音楽を担当してますね。

宇崎― はい。これは一昨年でしたか、やはり井上ひさしさんの脚本、蜷川さんの演出で、『天保十二年のシェイクスピア』をやらせていただいたご縁なんです。今度はギター一本だけで、なにもかもやるんです。
 それからいま岩城滉一さんのレコードをプロデュースしてるんです。彼はもう56歳ですけど、デビューのころレコードを出しているし、それに前にもアルバムを一緒につくってるんです。で、もう一度って、彼に働きかけたら、やる気になってくれたんですね。いまレコーディングは仕上げの段階に入っているんですけど、彼がどう歌うか、お客さんがどう聴いてくれるか。みんなで、わいわいやりながらつくりあげるのがすごく楽しいですね。

木村― いま、職場で上司と部下、あるいは家庭で親と子どものコミュニケーションの断絶があるじゃないですか。宇崎さんの場合、若い方とご一緒にやられることも多いと思うんですが、そういうときの大人の側のコミュニケーションのとり方について、何か秘訣はありますか。

宇崎― やさしいふりして有無を言わせない。例えばいま、大学の軽音楽クラブのOB会の会長をやってますけど、現役の学生さんもいるんです。いまの学生さんは先輩に挨拶できないんですね。昔だったら多分、有無を言わせずコーンって蹴ってるかもしれない。でも、いまはそれはできない。向こうも、あまりにも歳が離れすぎているので、僕を何か仙人みたいに見てるのね(笑)。こちらからはいくらでもコミュニケーションをとる気はあるんだけど、向こうが戸惑っているから……なでてもダメだし、ぶってもダメだし、これはとっても難しいですね。
 ただ彼らと一緒に音を出すとき、例えば彼らがファンキーと思うフレーズを僕がラッパ吹いたときに、みんなが一斉にこっちを向いて、ニヤッと笑うんです。ああ、音楽があればコミュニケーションがとれるんだなあと。だからなるべく一緒に演奏したり、発表したりする場所を、まあOB会の会長としてはつくって、現役との間の壁やら溝やらを埋めていきたいなと思ってるんです。

木村― 最後に、いま団塊の世代の退職とかいろいろ言われてますけれど、50、60歳から、もっとポジティヴに生きていくためには、何が一番、大事なんでしょうかね?

宇崎― 僕が最近、自分を褒めてあげたいのは、いまも話しましたが、昭和40年代にヨメと知り合った、明治大学のデキシーバンドを40年ぶりに再結成したんです。年金で暮らしている人、今年60歳になる人、そんな音楽から遠く離れてしまった人たちを集めて、「もう一度、やるぞ!」と。最初、みんなできるかなと話していたんですが、2週に1度稽古をやり始め、発表の場を見つけて、合宿までしたんです。それで、昔やった趣味をもう一回、取り返したんですね。先輩たちは、「君は僕に、生き甲斐をくれた」とまで言ってくれる。本当にこのバンドをやっていて、楽しいですからね。
 ですから、今年から団塊の世代の人たちがリタイアしていくらしいですけど、静かに暮らすのもいいし、お酒を飲むのもいいし、フィッシングをするのもいいと思います。でも、昔、バイクでツーリングをしていた、あるいはエレキをテケテケやっていた、という人だったら、もう一回、再結成してもいいんじゃないかな。同じ世代とね。絶対、そこに青春のときめきがあるんですよ。そうしていただきたいな、と思います。

木村― いいことを教えていただきました。これからも、宇崎さんのように、素敵に、そして“妻の”の背中を見ながらやっていきたいと思います。

〈後記〉「妻の背中」か、宇崎さんが言うとカッコいい。「妻のお腹」しか見ていない私にとって、到底吐くことが出来ぬセリフである。気障でも何でもなく、サラッと言えるところに夫婦の有り様が窺えて素敵である。生まれが伏見桃山だとか。私が育った所である。年も同じ。宇崎さんとは比ぶべきもないが、こんな格好良い同級生が居ることを誇りにしたい。(木村)

撮影=瀬戸正人、構成=森國次郎

木村政雄編集長 Special Interview

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