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その1 まずは自己紹介から

尹 煕元(ユン ヒウォン)

 経歴ついでに、少しだけ昔話を記します。私が証券会社で過ごした期間は、世界が激動した時代でした。天安門事件、ベルリンの壁崩壊、イラク戦争(湾岸戦争)、ソ連崩壊、非自民政権発足、サリン事件、アジア通貨危機。そして、証券会社退社後は、ユーロ導入、米国同時多発テロ、第二次イラク戦争。これらの出来事をみなさんは、いろいろな立場でご覧になってきたことでしょう。そのとき、もし、金融市場に関わっていたとしたら(関わってこられた方もおられると思いますが)、たくさんの劇的なドラマを目の前で目撃し、感じ、対応を迫られたことでしょう。過去20年間、金融の世界にも数々のドラマがありました。でも、実は、これからの10年に、過去の出来事にも勝るとも劣らないドラマが待っていると私は思っています。そんなとき、そのドラマを特等席で感じるために、必要なこと、役立つことを提供することがこの連載の目指すところです。
 金融ドラマを観るために必要なこと、役立つこととは何か、についてもう少し具体的なことを記しましょう。私はエコノミストでもアナリストでもありません。ましてや、作家でもありません。したがって、わかりやすい文章を書く術を知りません。私の本業は研究です。研究者は未知なる事象に対して、その本質を捉えようとチャレンジすることが職務です。そして、ものごとの本質を捉える際に、できるだけ定性的および定量的な手段、言い換えれば客観的な物差しを使うことが求められます。前例踏襲であったり、権威を振りかざして断言したり押しつけたり、というのは、研究者のとるべき態度ではありません。未知なることに挑むには、メジャーでない方法論を使ったり、新しい手段を創造することも時には必要です。私の場合、その手段を「経済物理」と「コンピュータサイエンス」に求めています。経済物理は、1997年にブダペストで開かれた物理学者たちの集まりに端を発しており、まだ、10年の歴史しかない研究分野です。具体的な成果は、今後の研究次第でしょうが、多分、近い将来、経済物理の分野からノーベル賞受賞者が出るでしょう。私も研究者ですから、当然、ノーベル賞を狙っています。こんなことを書くと、常識のない学者の戯言と思われるかもしれません。でも、本気で研究をするなら、そして研究で飯を食うなら、その分野のトップレベルを目指さなくて、何が研究者でしょう。ノーベル賞をとれるかとれないかは、実力もさることながら運にも左右されます。研究において大事なことは、どの水準が世界のトップレベルで、どの方向に向けて研究を進めるべきかを判断することです。そうすれば結果は自ずとついてきます(むろん勲章は結果であって、そのために研究をする気は毛頭ありません)。実力があるかどうかは、読者のみなさんが判断してください。本誌の読者である経験豊かなみなさんが興味を持てるような話ができなければ、金融という実学で役に立つ研究などできないでしょう(この点では、この連載は私にとって、新しいチャレンジなのです)。

ユン博士の金融流体力学

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