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北大路欣也 俳優

父の眼力

万俵大介の目

木村―― 僕は、北大路さんを拝見してて、とっても端正な役柄が多くて、目のきれいな人だなあって思っていたんです。やっぱり役者さんて、目、大事ですよね。

北大路― デビューの頃から目に対する意識というのを僕は非常に感じていましたね。せりふは、まあうまくいくときもあるし、うまくいかなくても、それはそのときで許してもらえるんだけど、目線というのは許してもらえない。「まばたきをしないでここを見なさい」っていうふうに指導されながらやりましたから、いちばん最初に意識したのが自分の目なんですよね。

木村―― ああそうですか。まばたきしてはいけないんですか。

北大路― ある表現をするときに、目をつぶってしまうと、誰も見えないですからね。相手を見て、なにかを訴えてくださいっていうのが演出のほうにあるんですね。

木村―― その目がとくに印象的だったのが万俵大介。『華麗なる一族』のあれは怖かったですね。北大路さんはいままである種の善の人ばっかりじゃないですか。今回の万俵大介は、どちらかというと、もちろん善意の人ではあるんですけども、やっぱり木村拓哉さんと対立するみたいなところがあるじゃないですか。ああいう役をお引き受けになるときに抵抗はなかったですか。

北大路― 万俵大介はちょうど僕と同じ年齢ですよね。ということは、まあそういう役がきても当然なわけです。よく考えてみれば、僕も父親と同じ世界のなかで生きてきて、僕も親子の関係ということではいろいろ経験してるわけですから、まったく僕の知らない世界の話ではない。僕、鉄平の気持ちもすっごくわかるんですよ。どっちかというと鉄平のほうがわかるかもしれない。

木村―― 鉄平、できるんじゃないですか、いまでも。

北大路― まあ思いかえせばね、自分の父親も大介とダブるところもあるし、なんか自分のなかにあるそういう思いを演出家の方に引っぱり出してもらったんですね。
 僕が13歳で「映画を引き受けます」って父親に言ったときに僕をにらみつけた父親の目は、大介の目より怖かったかもしれない。
でも、あれが大きな演技指導だったかもしれないね、50年後の。だってはっきり覚えてますから。怖かったんですよ、やっぱり。

木村―― なるほど。

北大路― でもね、ちょうどデビューして50年というね、節目の年でもありましたから、こういう作品をいただいて、まっさらな気持ちでぶつかることができたのも、ラッキーだったと思っています。

木村―― もういっぱい作品にお出になってるんですけど、これから取り組みたい役はありますか。

北大路― 今までは、自分よりも強い、自分が憧れる役がほとんどだったと思うんですね。だから今度は、普通の人。普通に生きている人を、淡々と生活をしている人を、もしそういうお役がいただけるならば、挑戦してみたいですね。

木村―― でも窓際族のサラリーマンなんか、こんな眼力(めぢから)のあるサラリーマンいませんからね。これじゃ上役が怖いですよね(笑)。
 さて、最後にこの雑誌は50代の読者が多いものですから、50代からもっと楽しく輝いて生きるための秘訣みたいなものをおうかがいできればと思います。

北大路― 僕、よく言われたんですよ、30代を楽しく生きたければ、20代を一生懸命生きろって。

木村―― そうですよね。

北大路― 僕自身、振り返ってみると、どっかでギアを間違えてね、いいスピードだと思って走ってたら、ぜんぜん違うスピードで壁にぶつかったりスリップしたり、それを修正しながらやってきた、まあクラッシュは免れたけど。だから、20代をしっかり生きるというのが、僕のなかでは目標だったような気がするんですよね。ですから、50代をどう生きるかは40代にかかっているし、50代をしっかり生きることで、その先が楽しくなるんでしょうね。

〈後記〉まるで画面を眺めているかのような錯覚に陥った。語られるエピソードがいずれも臨場感に溢れていて、思わず引き込まれ、いつの間にかインタビューすることを忘れてしまうほど。さすが千両役者である。「いよっ! 北大路!!」。思わず声を掛けたくなるような男振りであった。後ろ姿を見送りつつ、ふと考えてしまった。「どうしたら、あんなにカッコ良くなれるんだろう?」(木村)

撮影=瀬戸正人、構成=森國次郎

木村政雄編集長 Special Interview

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