4月に出版された絵本『バルサの翼』は、油絵制作、音楽活動をやっていたからこそ、生まれたものである。少年の頃、父親とバルサ材でできた模型飛行機を飛ばした――吉田照美にいまも強く残る、その思い出を、濃密な筆致による絵と、端正な文章で綴ったこの絵本には、「YK型」によるテーマソングが入ったCD付録が付いているのだ。しかも、作曲は井上陽水! 贅沢な、絵本である。
「『やる気MANMAN!』が今年20周年なので、記念として何かできないかと、陽水さんにお願いしたのが、この曲が生まれたきっかけなんです。たまたまボクは陽水さんと親しかったので、何とかお願いしたんですが、番組が終わることになっちゃった。でも、陽水さんが気を遣ってくれて「照美さん、詞を書けないの」と言ってくれた。それで、親父との思い出でこういう話があると話したら、それはいいねって言われて、詞にまとめてみたんです。ただ、陽水さんもいろいろ忙しいですからね。それに、ボクの書く詞だからもっと即興的な、軽い感じだと思っていたようなんですよ。結構、真剣に詞を書いちゃったから、引かれちゃったんじゃないかと思う(笑)」
「この話はなかったことにしてください」とメールを送り、諦めかけていた。だが、井上陽水は詞のイメージに沿った、素晴らしいメロディをつけてきた――ちょうど、その頃、吉田照美に絵本のオファーがあった。そこで、この父親との思い出を話してみると……ぜひ、ということになった。そしてCD付きの絵本になることに、トントン拍子に話は進んだ。
「ただ、時間がなかった。絵本の構成はできていましたが、絵を描くのにも、油絵だと乾くまで時間がかかるんです。そこで、今回は初めて、すぐ乾くアクリル絵の具を使って描きました。それに、レコーディングも、小島クンは心配ないんだけれど、ボクは録音日が一日しかなかったり、たいへんでした。そんななか、何とかボクの歌も陽水さんにOKをもらって、間に合わせることができました」
完成された絵本を開き、CDを聴くと、吉田照美が込めた思いが伝わってくる。
「嫌な事件が数多く報じられていますが、そんななか、やはり基本は“家”だと思うんです。ボクらの頃は、みんな貧しかったけれど、親がしてくれたことが、子供にもよくわかった。例えばこの絵本の、父親がバルサ材でできた飛行機を飛ばしてくれたことなんて、小さなことだけれど、ボクにとって結構、大きなことだったりする。そういうことをメッセージとして、絵本で伝えられればいいなと思ったんです」
次の絵本も構想中。そして個展に向けての油絵制作、音楽活動と多忙な毎日。だが、やはり軸足はラジオに置く。
「ラジオの仕事は、喋れる限りはやっていきたい。でも、新しいことをやると、さまざまな人間との出会いがあって、さらに新しい出会いにつながっていく。それが面白いし、ラジオの仕事に自然とフィードバックできるところがあるんです。失敗してもネタになるし、ヘンなことを一生懸命頑張っていることは、見る人によって滑稽に見えるかもしれないけれど、この人は何かやろうとしているという、ポジティブな気分が伝わればいいと思うんです。なにごとも、最後まで諦めないでね」
『ソコダイジナトコ』、番組タイトル通り、自分なりの生き方で、しっかりと、吉田照美は毎日を送っている。
取材・文=羽柴重文(編集企画室Over-All)、撮影=山埼淳
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