ようこそ ゲストさん [ログイン]


トップページ > バックナンバー > ユン博士の金融流体力学 > 

  • 印刷
  • 大
  • 中
  • 小

その4 投資と投機

尹 煕元(ユン ヒウォン)

長期と短期を分ける明らかな基準

 みなさんは、時計を使わずに時間を正しく認識することができるでしょうか? じつは、すべての人が、絶対に間違えることなく計れる時間の基準があります。それは、1日という基準です。日が昇り、日が暮れて、夜になって、また、日が昇る。この1日というサイクルは誰にとっても明らかです。さらに言えば、すべての生物にとっての時間の基準は1日なのです(昼と夜をまったく識別しない生物も若干いますが)。睡眠をとる動物のみならず、植物も昼と夜とでは活動(光合成は昼しか行いません)が異なり、昼と夜という1サイクルを意識?しています。
 1日という基準以外に、1年という期間もちょっと重要です。特に植物にとっては実りをあげるために必要な時間ですし、その実を獲得(収穫)する動物にとっても、まさに死活にかかわる基準期間になります。でも、1年という基準は、すこし厄介です。それは、4年に1度、長さが変わるということです。基準が変わってしまうのはすこし困ります。さらに、1日を365回、正しく数えなければならないことも面倒です。人間は時計やカレンダーを持っていますが、他の生物はこんな便利なものは持っていませんから、数え間違いを起こしかねません。やはり、生物にとっての明確な時間の基準は1日なのです。

金融の中の長期と短期

 じつは金融でも1日という基準はとても重要です。それは、通常、金融機関は資金のやり取りを1日の終わりに集計して、その日の総括を行うからです。この人間の経済活動は、市場の動きにも現れます。市場の動きは、1日の中での値動き(日中変動と呼ぶ)と、1日を1つの単位として考える値動き(日次変動と呼ぶ)とでは性質が異なるのです。ここで言っている値動きの性質には、いくつかの種類がありますが、その典型的なものはボラティリティです。ボラティリティは、値動きの激しさを表す統計値で、金融ではリスク指標として重用されています。これは、あまり知られていない(というよりほとんど調べられていない)ことですが、日中変動のボラティリティと、日次変動のボラティリティの間には、顕著な相関が見られません。すなわち、日中の中で市場と向き合っている人と、1日にせいぜい1回くらいしか市場の動きを気にしない人では、同じ資産(例えば同じ株式の銘柄)を持っていても、リスク感覚が異なる(リスクの見え方が異なる)ことを意味します。
 市場の動きが、日中変動と日次変動とで異なる理由は、前に記した通り「1日の資金のやり取りを集計する」という実質的な要因の他に、もう1つあります。それは、市場に参加している人の認識(記憶)という問題です。日中に売買する人は、その日の高値や安値を意識しますが、日次ベースで資産価値を見ている人は日中の高値や安値を気にしません。その日の高値でも買う人が存在する理由は、日中変動を気にしない人がいるからなのです。相場の格言に「今日の高値は明日の安値」という言葉がありますが、これは時間に対する認識(長期的視点と短期的視点)の違いから発生する事象なのです。

ユン博士の金融流体力学

一覧(7件)

ファイブエルストア

[ファイブエル]バックナンバー