髙田社長自身は物欲が希薄なほうだと言う。クルマにも、ファッションにも、家にも、固執するところがない。
「趣味は何かと聞かれると、困るんです。仕事と言うと、また笑われる(笑)」
昨年秋、5万円のモンブラン製万年筆を購入したのが、久々の贅沢だったという。そして、その話に水を向けると、途端にテレビで見慣れたあのハイテンションな語り口に変わり、饒舌に語り始めた。
「万年筆、使っていないでしょう? 使ってみてください。人生、変わりますよ。ボールペンとは、これはもう、全然、違うんです。例えば、「感動」と書いても、これが完璧に違う。ボールペンですと、「感動」が「感」で終わっちゃう(笑)。万年筆で書く文字は味わいがあって、メッセージが伝わるんです。……語り出しちゃうと、ボク、うるさいですね(笑)」
話を聞いているうちに、万年筆を使いたくなってきた……。確かに、モノが人生を変えることもある――ソニーのハンディカムを販売したことが、髙田社長の人生の大きな転機となったのだが、なぜ売りたいと思ったのか? それは、ビデオカメラ購入に失敗したからだった。夫婦で無我夢中に働いていたカメラ店時代、幼い三人の子供にあまりかまってやれなかった。そこで、せめてもの思い出づくりをしようと、60万円以上もしたビデオカメラを月賦で購入したのだ。だが、そのビデオカメラは大きくて重く、使い勝手が悪く、活躍することはなかった。そのため、パスポートサイズのハンディカムに飛びつき、売りたいと思ったのだった。以来、現在、副社長を務める恵子夫人と、他人の人生を変えることもできる夢のある商品を扱っていくことが基本姿勢となり、それが成長の原動力になっているのだと思える。 そしてまた、ラジオからテレビ、紙媒体、ネットとマルチメディア展開をしていったのは、語りたいこと、メッセージをきちんと伝えたいがために、必然だったのだ。
「テレビショッピングを始めてみたら、そのうち自分たちで制作したくなったんですよね。外注すると、紹介する商品も1ヵ月ほど前に決めなければならないし、思い通りにいかないことも多い。それで、スタジオをつくって、撮影、編集機材も揃えたんですが、出演も自前でやりたくなって、現在はほとんど社員ですね。年月をかけて、やりたいことはやっていけば、そこそこはできていくんですよ」
ジャパネットたかたのテレビショッピングの番組は、すべて佐世保の自社スタジオで収録される。スカイパーフェクトTV!のCS放送「ジャパネットスタジオ242」はもちろん、テレビ東京の平日朝帯の情報番組『朝はビタミン!』の「快適!ショッピングスタジオ」ほかも佐世保からの生放送。また、日本全国で一日約60本OAされるラジオショッピングも、すべて佐世保からの生放送である。そのうえ、折り込みチラシやカタログなどの紙媒体、Webコンテンツも自社で制作するという自前主義を貫く。ここ10数年のIT技術の発展がそれを可能にしたところもあるが、聞けば、朝、メーカーから持ち込まれた商品がいいと思えば、その日のうちに番組で販売することもあるという。技術を自家薬籠中のものにして、十二分に活用しているのだ。
「佐世保から離れるつもりはありません。食事は美味しいし、渋滞もないですし、故郷の近くでビジネスをできることは、幸せなことだと思いますからね」
今年7月にはTV中継車を購入。新しいかたちの通販番組を常に考えている。
「引退したら、女房と海外でのんびりしたいという気持ちもありますが、中継車に乗って、日本全国、行く先々でモノを売っていくのもいいかもしれませんね」 モノを売ることによって、世界を広げていく1948年生まれの団塊の世代、髙田社長の挑戦は、まだまだ続いていく。
取材・文・撮影=羽柴重文(編集企画室Over-All)
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