1971年8月15日、当時のアメリカ合衆国大統領ニクソンは「価値あるもの(金)と紙切れ(ドル)との交換を止める」と発表しました。この発表は世界をびっくりさせました。当然ですね。誰しも、突然、価値あるもの(金)と紙幣が交換できなくなると言われれば、紙幣はただの紙切れになってしまうかもしれない、という不安に駆られます。この発表の背景には政治的なことや経済的なことなど、いろいろなことがあります。難しいことは歴史書や経済書に委ねるとして、物理学者(流体力学者)の視点でこの現象を考えてみると、この発表が画期的な発明(発見)だということがわかります。「発明(発見)って?」と思われるかもしれませんが、次節でくわしく説明しましょう。
その5 お金と流体力学
尹 煕元(ユン ヒウォン)
金本位制?からの脱却
じつは紙切れの問題じゃない
これまでに記した紙幣の話は、じつは「紙切れを価値あるものに変える問題」ではなく、「お金というものを価値あるものとして活用するにはどうすればよいか」という金融の本質に関わる問題なのです。つまり、経済活動を司るためのお金を、物理的な実態(金)から切り離してどのように管理すべきか、という信用創造に関する議論なのです。「よくわからないことを記しているなあ」と感じる方もいるかもしれません。単純に考えましょう。もし、金を基準としている(金本位制の)国の規模(国の消費量)が、世の中にある金の埋蔵量を超えてしまったら、どうすればよいでしょう?
金では足らないから、銀も加えようと考えますか?
銀を加えても足らなかったら……。それなら「金と紙幣の基準比率を調整すればいいや」と思っても、それは根本的な解決にはなりません。なぜなら、物質の量には上限がある一方で、経済の大きさには上限がないからです(と言うより想定ができません)。結局、人の活動である経済を司るお金を、限りのある物質(金)を基準に考えることに無理があるのです。つまり、ニクソン大統領の発表(ニクソン・ショックと呼ばれています)は、「限りある金を基準に経済を運営することに無理がある」という発見を公表したのです(もっと昔から、そのことを主張した人はいたでしょうが、私は知りません)。
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