先にも記したが、マスタングといえばいわゆるファーストマスタングと呼ばれる第一世代が代名詞。60年代のそれこそ、まさに日本人が憧れていたアメリカの産物だ。でも、いまとなっては懐かしい想い出。40年以上経つそれをまともに走らすのは難しいと思うのは当然のことで、第一パーツだってそう簡単に手に入るもんじゃない……。
と思いきや、このクルマに関してはすぐに諦めるのは早合点のようだ。アメリカ本国はもちろん、日本にだってパーツはけっこうある。というのも、その時代のマスタングこそ大ヒット商品。1965年もその翌年も、年間60万台以上売れたというから驚かされる。なんとこの記録はいまも破られていない。なもんだから、パーツはもちろんクルマ自体いまもけっこう残っている。それに全米にファンが多いことから、扱う専門ショップは多く、オリジナルパーツからリビルト品まで出揃っている。
もっというと、日本にも専門ショップはあり、レストアから修理まで幅広く引き受けている。かつてある専門ショップを取材したことがあるが、あまりの美しい仕上がりに、ニュージーランドのショップオーナーが買いに来たそうだ。その意味じゃ、逆に日本で探す方が程度のいいタマに出会えるかもしれない。
さて、ひとくちにファーストマスタングといっても、じつは細かく分かれている。実際、当時の自動車業界は毎年のようにフロントマスクに手を入れるのが当たり前だった。で、マスタングも例に漏れない。具体的には67年にボディは少し多きくなりフロントやリア、サイドなどが彫りの深いデザインとなる。そして69年にはファストバックがスポーツルーフに。71年からは5mを超えるボディサイズに拡大、73年の第一次オイルショックまでその大きさを誇る。エンジンも年式により異なるが、3・2リッター直6から4・7リッター、5リッター、7リッターといったV8まで多岐に渡る。
とはいえ、「そんなの関係ねぇ~」でOK。自分が一番懐かしいと思う、当時憧れの年式を見つけ出せばいい。でもって、オリジナルに仕上げるもよし、中身を現代版に置き換えるもよし。あの頃の憧れを実現するのがよろしいかと。あまりオリジナルにこだわらなくいい気軽さがマスタングにはあるんですよね。
フォード・マスタング
フォード・マスタング

クーペ、コンバーチブルからはじまったマスタングだが、翌年には美しいと好評のファストバックが追加され、モデルバリエーションを増やしている。そして70年を頂点にハイパフォーマンス化。その間、Mach1、Boss302、シェルビーGT500KR、シェルビーGT350などといった特別仕様車がリリースされ、どれも話題となった。映画「60セカンド」に出て来るエレノアはシェルビーGT500のこと。
九島辰也(くしま・たつや)モータージャーナリスト
1964年、東京 自由が丘生まれ。外資系広告会社から一転、自動車雑誌の編集者を経て、2005-2006日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、雑誌「LEON」副編集長などを経験する。現在は自動車専門誌から一般誌、トークショー、メーカー講師など幅広く活動中。
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