前月号で、日本の硬貨は財務省によって造られ、紙幣は日銀が発行していることを紹介しました。これは、紙幣がお金の主役であり、硬貨があくまで補助的な通貨であること、つまり、日銀がお金の発行を主体的に行い、財務省(政府)はあくまで補助しているに過ぎない、ということを知ってもらうための一例です。今回は、前月号の流れをおさらいして、さらにお金についての話を掘り下げてみます。
その6 国債と補助通貨
尹 煕元(ユン ヒウォン)
前回のお話
お金は、紙切れのような価値のないものに対して、統治者(政府等)が「紙切れを信じろ」と宣言して、流通させているものです。昔は、統治者があまり信じられていなかったので、「価値のあるもの(金など)と交換してやるから信じろ」と言っていました。ところが、1971年にアメリカのニクソン大統領が「無限に大きくなる経済を、有限の量しかない金と交換し続けるのは不可能(金本位制の崩壊)」と暴露したことにより、本質的なお金の管理(信用創造)が始まりました。現在、お金の管理は、政府が行うと様々な問題が発生するので、政府外の機関である中央銀行が司るという体制として確立されています。中央銀行によるお金の管理は、単なるお金の発行量という量の管理のみではなく、お金の流れの強さと密接に関係する金利の調整によって行われています。これは、経済をボイラー(釜)のようなものとして想定するとイメージしやすく、流体力学的な視点が今後の経済運営に有効かもしれません。
ここまでが、前回の話でした。それでは、お金についてもっと突っ込んだ話を始めましょう。
借金大国日本
日本政府は、昨年度(平成18年度)に27兆4700億円の国債を発行しました(当初の予算では29兆9730億でした)。同年度の日本政府全体の歳出が83兆4583億円ですから、使ったお金の32.9%を借金でなんとかやり繰りしているということです。この借金の度合いは主要国(G7参加国)の中で最も悪く、過去に溜まった借金の総額は、日本のGDP(働くことによって稼ぎだすお金)の約1.8倍です。この数字は、日本政府が使うお金ではなく、日本全体が稼ぎだすお金の倍近くということです。さらには、過去10年間で借金を増やし続けているのは日本だけで、これはとても困ったことなのです。
そこで日本政府は「ともかく、借金を増やすことだけでも止めよう(プライマリーバランスをゼロにするということ)」と号令をかけています。でも、政府の借金比率(32.9%)は、いくつになったら本当に大変なのでしょう? じつは、風の噂で聞いたことですが、数年前、政府のある諮問機関で「借金比率は、いくつになったら本当にヤバいのか?」という議論がなされたそうです。その際、「50%以上だとまずい」と誰かが発言したときに、経済物理学者が「なぜ五〇%だとまずいのですか?」と聞き返して、その場の空気が固まったそうです。すなわち、誰も借金のことを漠然としか考えておらず、定量的な評価をしていなかったそうです(正確には、できなかったということです)。今でも、この質問に答えることは難しいでしょう。それは、過去にこのような事例がないからです。どうすれば良いのでしょう? 本誌はエンターテインメント誌なので、堅苦しい議論ではなく、楽しむ視点でこの質問(借金比率はどれくらいがヤバいのか)に対する答えを考えてみましょう。
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