民主党・小沢代表の辞意撤回会見には驚いた。わずか二日での翻意はセレモニーを見ているようで、「やっぱりな」としか思わなかったのだが、辞任表明の理由を「気力もとぎれてプッツンした」と述べたのには驚いた。「プッツン」ってどうよ……という感じがした。 政治歴三八年、当選一三回を誇る六五歳のベテランが発する言葉として違和感があることは否めない。それとも当世流行のギャル言葉を使用することで、情報感度の鋭さをアピールしたかったのか? いやいや、会見という半ばオフィシャルな場であることを考えると、いささか不適切な表現ではなかったか、という思いが否めない。 それなら、自らが職を辞する時に、「困難な状況の中で、実行責任を果していくことが出来ないのであれば、政治的困難を最小限にするために、なるべく早く判断するべきという決断に至った」と述べた安倍前首相のコメントの方に分がある気がする。 また小沢さんは、会見に先立って行われた両院議員懇談会の席でも、「いまだなお私は不器用で口下手な東北かたぎ。どうしても説明不足になりがちで、それが混乱の一因かと思う」と反省の弁を口にしたとか。己のパーソナリティを地域のせいにしてはいけない。それなら関西人は皆がお笑いタレントになってしまう。「面白くない関西人」もいれば、「列車に乗る時、きちんと整列する関西人」もいる。 広く世界に目を向ければ、「女性を口説けないイタリア人」や「センスの悪いフランス人」もいるし、「スポーツの苦手な黒人」や「リズム感のない黒人」もいるかもしれない。 現に東北からは、みのもんたさんや小倉智昭さんといった喋りの達者な人も出ているし、西田敏行さんや加藤茶さん、故人となった由利徹さんのような器用な人たちも出ている。(やや小粒ではあるが)キャイーンのウド鈴木さんや漫才の酒井くにお・とおるさんだって東北出身だ。 第一、小沢さんの出身地岩手は、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋【イカ】ラズ イツモシヅカニワラッテヰル …… ホメラレモセズ クニモサレズ サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と詠んだ宮沢賢治を輩出しているではないか。 「瞋ラズ」とは「怒って目をむかない」ということだ。「プッツン」したり、「キレ」たりしないで、悩みを戦略に転化させる強【したた】かさこそがリーダーたる者に求められているのではないだろうか。 「諦【あきら】めない」ことが肝心だ。一度や二度、望んだことが叶わぬからといって、望みを捨て観念していたのでは次の展開はない。「諦」という字には「つまびらかにする」や「明らかにする」という意味もある。どうせあきらめるなら、「諦める」ではなく「明らめる」にしてみればどうだろう。 やや涙目で、不器用に釈明コメントを読み上げる小沢代表の姿を目にして、ふとこんな思いにかられた。
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