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自宅ではゴミを着ている

 もちろんいまだって物欲はあるから、探して買いたいものはある。でもそれは自分で探さないといけない。だからこの場合、答えようとすると、お金だけ下さい、自分で買いますから、ということになってしまう。
 もちろんこれは真面目すぎる考えで、アンケートだからもっと適当でいいんだけど、その適当な考えが浮かばないので困ってしまった。
 商品が画一化されてくると、商品自体が物よりも数字の世界に近づいてくるということだろうか。これ、という物の魅力が無くなってくるようなのだ。数字だけ上げるといわれても、ぼくの場合は実感がわかない。もしファンド人がTBSを買って、それを丸ごと上げるといわれても、ぼくはいらない。そんなもの貰っても面倒なだけだ。先のプレゼントのアンケートみたいに、お金だけ貰います、ということになるだろう。誰だってそうだと思う。いや誰だってというわけではないか。プラトニックラブの好きな人はけっこういる。物欲はないけど金額だけを愛する人は増えてきている。人生いろいろ。金額世界にどんどん近づきたい人がいれば、そこからできるだけ離れたい人もいる。みんなその間を揺れ動きながら生きているというのが実情だろう。
 でも世間というのは公開の場であるから、本当の実情は少々見えにくい。みんないちおうはこざっぱりしている。しゃべるときも、表明する自分の思想も、みんなこざっぱりを心がけている。選挙のことでも靖国問題にしても、いざ意見を求められると、こざっぱりとしたことをいうものである。
 でも自分の家の中ではボロボロのゴミ寸前のものを着ている。その方が気が安まるからだ。選挙のことでも靖国問題にしても、ボロボロのゴミ寸前の考えを頭に抱いている。人に見せられたものではない考えである。もし見せたら、すぐにつまんでゴミ箱に捨てられてしまいそうな考えである。そんな考えでいる方が気が安まる。その方が体が伸びるのである。人生いろいろというが、最後のところはその人生だ。数字だけを風船みたいにふくらましていても、最後のところはゴミ寸前のものの着心地の良さに着地する。

赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)1937年、横浜生まれ。『父が消えた』で芥川賞受賞。『ふしぎなお金』『目玉の学校』など、著者ならではの、まともに考えれば考えるほど不可思議な人間社会の謎を探究する目からウロコの名著多数。

赤瀬川源平 世相真面目にななめ読み

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