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2007年赤狩り旋風

北海道のミートホープの場合は、そうとう悪質な混ぜ物をしていたわけで、これはやはり叩かれて当然だろう。
  でもそれにつづく赤福叩きの辺りから、世の中はちょっとおかしな空気に包まれてきた。
  世の中がおかしくなったというより、マスメディアの神経がちょっと異常になってきた。でもいまの日本ではテレビ新聞などのマスメディアがそのまま世の中というものに成り変っているのが現状だから、やはり世の中がおかしくなってきたといってもいいのだ。
  食品会社が次々と槍玉に上がり、賞味期限が違う、製造年月日がずれているということで、各社の責任者が一斉に報道陣に向かって頭を下げる。
  頭のてっぺんなんてもともと見るようには出来ておらず、まして責任者という高齢者の頭のてっぺんは見かけがわるい。それを毎日たくさん見せられるのは、気持ちのいいものではない。食欲がなくなる。
  こういうことが毎日つづくと、ぼくは昔のマッカーシー旋風というのを思い出すのだ。かなり古い話で、まだソ連という共産主義大国が存在していて東西冷戦といわれた時代、アメリカで赤狩りの風潮が激化した。
  赤とは共産主義者のことで、マッカーシーという上院議員が先頭に立って、その主義者を摘発する空気が濃厚となり、それがアメリカ全土に旋風となって吹き荒れた。
  ソ連はというとそのまったくの裏返しで、そもそもはその主義者が国家の王座に座り、とくにスターリンになってからはそれが絶対の首領様で、そもそもが青狩りの徹底によってその権力が出来上がったのだ。
  赤の反対が青かどうか、それ以前の勢力を白系ロシアと呼んだりして、いろいろご議論のあるところだが、まあソ連の方は当時鉄のカーテンと呼ばれる言論統制が徹底していたからよくわからない。それもあって世界中のインテリが赤になびいてしまった。インテリというのは、現実よりも理屈に弱い。
  で、一方のアメリカではそのマッカーシー旋風と呼ばれる赤狩りだ。ぼくはまだ中学生だったからその骨組みはよくはわからないが、その空気はよく覚えている。ぼくにもインテリ願望はあったので、高校に進むころから少しずつ赤に染まっていくわけで、そのマッカーシー旋風の赤狩りというのは、何だか冷たい空気として記憶している。
  で、赤福である。赤だから赤狩りではないのだけど、赤福にはじまる各食品会社の謝罪の嵐を見ていて、マッカーシー旋風を思い出したのだ。正に赤狩りである。別に人を殺したわけではないのだけど、ビシバシと糾弾される。たしかに日付を改竄したのだけど、そのことだけで、会社トップの人々が一斉に頭を下げる。もちろん嘘をつくのはよくないことで、理屈ではそうなんだけど、直接の危害を加えたわけではない。その恐れがあるということだけで、ぞくぞくと謝罪している。
  それがつづくと、とにかく謝罪ということだけが記憶に残り、それに至る理屈がだんだん希薄になって消える。今日も謝罪、明日も謝罪、というパターンだけがこびりつく。これはやはり、後世、謝罪の嵐が吹き荒れた、マッカーシー旋風に匹敵する時代として残るのではないか。

赤瀬川源平 世相真面目にななめ読み

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