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高橋英樹 俳優

男が元気じゃないと世の中つまらん!

「斬りてえなあ」

木村― お生まれが千葉の木更津とうかがいましたが、育たれたのもそうなんですか。

高橋― 父が高校の教師をしておりまして、転勤、転勤で、小学校は三回も変わりました。ただ、そのせいもあるんでしょう。二日もあると、10年もそこにいたような顔ができる。人見知りまったくなしです。

木村― 素晴しい性格ですね。ところで、ご両親とも先生で、ご親戚も教育関係の方が多いとうかがいましたが……

高橋― そうです。親類のうち30人ぐらいは教育関係だと思います。

木村― それはすごい。でも、そういう環境の中で映画界に進むというのはすごい抵抗があったでしょう?

高橋― もちろん大反対されましたし、親戚からは、なるべくうちには顔を出さないでくれというようなことになりまして(笑)。
 高校に入って電車通学をするようになって、悪いことに通学途中に映画館が2軒あったんですよ。それが3本立て55円という映画館。おふくろに弁当をやめてパンにするからといって30円ずつもらって、二日ためて映画を見に行きました。

木村― お昼は食べないんですか。

高橋― それは、いい友達がたくさんいましたので(笑)。「あしたはおまえ、あさってはおまえな」といって弁当をつくってもらってました。

木村― それって友達というより手下って感じですよね。

高橋― 映画好きもだんだん高じてきまして、もらったお金は全部ためて映画につぎ込んで、成績はもうつるべ落としのように落ちた(笑)。
 高校2年のときに、自分の進路を決めるための作文に「将来映画俳優になりたい」と書いてしまったんですね。それが非常に具体的だったようで、担任の先生から、すぐ父親のほうに連絡がいきまして、オヤジは激怒しました。「一度受けさせればいい、ぜったい落ちるから」ということで、たまたま朝日新聞に載った「日活ニューフェース募集」の広告を見て、応募したんです、オヤジが。で、とんとんと入ってしまったんですが、急にオヤジは「勘当だ!」とか言っていましたけどね。

木村― 自分で申し込んでおきながら。なんとひどい。

高橋― ええ、「高校を卒業するまでは面倒見るけど、後は知らん」とか言って。でもデビューして1年後に父親は亡くなったんですけど、すべての映画を見ていたようですから、やはり心配だったんでしょうね。

木村― 結果としたら最大のアシストをなさったんですね、お父さんは。

高橋― そうなんです。父親のおかげなんです。でも、運というのはどう変わっていくかわからない。

木村― テレビの世界へはどういうきっかけで入られたんですか。

高橋― 日活の映画の中で、来る日も来る日も刺青、来る日も来る日も斬った、張ったというのが続きまして、石原裕次郎さんは年に1回ぐらいの正月映画に来るだけ。吉永小百合さんもたまにいい企画があったらやるだけみたいなことで、小林旭さん、私、渡哲也、この3人が、とにかくのべつまくなしにプログラムピクチャーをつくり上げるという時代がずっとありました。
 そんな時期に、NHKから、「大河ドラマをやりませんか」という話がきまして、北大路欣也君が坂本竜馬をやった「竜馬がゆく」(1968年)の武市半平太役です。もうなんでもいいから、よそのものに触れたいというときだった。
 その武市半平太をやったときに、「高橋さんは新劇の方ですか」と言われたんですよ。それまでにさまざまな映画で主演をずっとやってきたのに……。世間の評価と芸能界の中の評価はまるで違うということに気がつきましたね。それにNHKの大河ドラマに出た効果ってすごく大きかったですから。「よし、このまま時代劇をやろう」と思っていたら、パッと次に「旗本退屈男」(フジテレビ、1970年)が来て、それからどんどんテレビに出るようになったんです。自分では意識してないんですけれど、けっこう乗り替えが早かったかな。

木村― 外の世界に対して興味を持つということなんでしょうね。映画の世界だけにいると、きっと居心地が良かったと思うんですよ。いまや殺陣では日本一という評判ですが。

高橋― そうですね、自分でもそう思います。きのうもNHKで殺陣師と話していて、「いま、生きている人で高橋さんがいちばん斬ってますかね」と言うから、「そうですね。おれがいちばん殺しているかなあ……」と(笑)。
 ここのとこ何年か刀を抜かずに人間の深い部分を表現するようなドラマが多かったものですから、時々「斬りてえなあ」とか言ってますけど(笑)、あれはまた特別ですね。

木村― そうですか、快感ですか。

高橋― 快感です。もう強烈快感です。あんな気持ちのいいものないですね。

木村政雄編集長 Special Interview

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