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高橋英樹 俳優

男が元気じゃないと世の中つまらん!

高橋英樹

身長181センチ、体重80キロ。二枚目で張りのある美声、
ゴルフの腕前はハンディ7、最近は美術にも開眼……
役者にして人生の演出家、高橋英樹いざ見参!

木村― とても昭和19年生まれに見えませんね。お若いのに驚きました。

高橋― うーん、どうでしょうか。ただ、19年組って、芸能界の中でも活躍している人がたくさんいるものですから、それが一つの励みにもなっているというところがありますね。

木村― 他に映画やテレビの世界では、どんな方がいらっしゃいますか。僕がマネージャーをやっていました横山やすしさんは19年でしたけれども。

高橋― そうですね。みのもんた、久米宏、杉良太郎、田村正和、関口宏……みんな同年代というか、同世代ですね。だから、みんなが一生懸命がんばっている姿を見ていると、それはすごいエネルギーの活性化につながる。

木村― そうですよね。それだけ上の人がお元気だと、50代の人は、なかなかチャンスをつかめませんよね(笑)。

高橋― じつは50代の末に「17歳から仕事しているから、もうぼちぼちいいや」なんてちょっとリタイア志向になって……。60過ぎたら少し仕事もセーブしてなんて思っていましたら、50代の終わりにいきなり血圧が上がったり、めまいがしたりしまして、原因不明なんですよ。いろいろ調べてみたんですけれども、べつになんにもない。
 そういう時期に出会いましたのが、絹谷幸二さんとおっしゃる画家の先生なんです。先生の作品を拝見して、そのエネルギー、パワーの凄まじさに、自分がリタイアをしようなんて思いがものすごく恥ずかしくなりました。
 それから黒木国昭さんとおっしゃるガラス工芸作家がおりまして、歌川広重の「東海道五拾三次」をガラスで再現しているんですけど、その方の作品を拝見したときも、「これは負けていられない。なにがリタイアだ」と、「とにかくやるっきゃない」と思ったら、めまいも血圧も吹き飛びました。

木村― ほう……

高橋― ということは、人間はやっぱり〝やる気〟だと思うんですよ。気をなくした途端にだめですね。だからどんなことでもいいですから、出会いがあったら、それに向かっていこうという思いだと思いますね。
 私も59歳を前にして初めて絵を描くことに出会いましてね。NHKの「趣味悠々」という番組の中で絵を描くことになったんです。これは片岡鶴太郎君という非常にいい師匠に恵まれたこともあるんですね。

木村― 墨彩画ですね。

高橋― ええ、墨彩画です。鶴太郎君はほめ続けるんですよ。紙の上に墨をあてて、ふっと描こうと思ったら、ポタポタポタッと墨が落ちた。「あっ、すいません、ちょっと替えましょう」と言ったら、「いや、このポタポタがいいですね。これは高橋さん以外できない」と言ってくれたり、果物などを描くと「この色使いはすごい」とか言ってほめる。「ほめられると人間は伸びるな」と、つくづく思いましたね。それで絵にはまりだしまして、街を歩いていても、木がどうなっているかとか、道端がどうなっているかなどに興味を持つようになりました。
 今度は絵に字をちょっと足そうかなと思って書いてみると、バランスが崩れてバラバラになってしまう。そこで字を習いだしました。そしてどっぷりと書に浸りまして、昨年の三月に銀座で個展を開くまでになりました。それがどうも元気の源になったようですね。

木村― 昔から好奇心というのは旺盛な方ですか。

高橋― ほかのことに関しては非常に好奇心があったのですが、美術に関してはまったく興味はありませんでした。パリに行っても、いままではエルメスやルイ・ヴィトンに行っていたんですが、いまはもう美術館ばかり回っています。

木村― そうですか、変わるんですね。観察眼ができると演技も変わってきますか?

高橋― 変わってきます。美術のすべての基本はなにを抜くかということだと思うんですよ。全部描いたのではおもしろくない。なにを抜くか、どこにポイントを絞るかですね。
 演技でも、若いときはあれもこれも表現したいと思ったんですが、だんだんポイントを絞っていって、ここを表現して、あとを捨てるということがわかってきます。いい絵を見ますと、捨てているというところがとてもよくわかりまして、これが基本かなと思いますね。

木村― 奥義を体得されたようですね。

高橋― いやいや表現ですから、なかなかうまくそのとおりはいきませんけれども、やはり捨て去る技術をこの年になって気がついて、これはまた一つ自分のステップアップになったかなというふうに思います。
 いろんなものに触れて、いろんなものに興味を持って、人生を生き抜いていくことがいちばん大事なことなんじゃないだろうかなと思うんです。
 ことに男性は、会社という背中に背負っているものがなくなると、そこにいた友達も、仲間も、パッと消え去っていく。

木村― そうですよね。男性の問題は深刻ですよね。特にサラリーマンは名刺がなくなると、自分の存在を証明するすべがないんですよね。

高橋― ほんとに背負っているものがなくなったときの男性は弱いものですね。例えばホテルなんかでも、食事しているのはおばさんだけですからね。仲間で集まって、ピーチクパーチク、ピーチクパーチク、もうすごいんですよ。男の人は全員背広組。つまり会社の金で食っているんですよね。

木村― 本当にそうなんですよね。

高橋― 背広でネクタイ以外の男の人たちがほとんどいないんですよ。とにかく男性は自分が打ち込めるものをもっとつくり上げていくことが大事かなというふうに思いますね。

木村― おっしゃるとおり、まったく同感です。

高橋― やっぱり男が元気じゃない社会はつまらんです。


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