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第7回 日比谷界隈

【今回のルート】インペリアルラウンジアクア(帝国ホテル)→日比谷公園→スーラ

 気の早いクリスマスのイルミネーションが華やかな一一月の日比谷界隈。待ち合わせもシックに、帝国ホテルの一七階にあるラウンジにした。窓際の席からは、皇居の森がよく見える。
 日比谷公園へ行ってみることにした。
「小さなゾウさんがいるんだよ。ゾウさんに会いに行こう」
と荒木さん。はて、日比谷公園に動物園なんてあったっけ?
 黄金色のイチョウの木の下、誰もいない小音楽堂のまわりを歩くと、気分はすっかりウィーン。モーツァルトが聴こえてきそう。それもそのはず、ドイツ式に設計された日本初の近代公園で、一九〇三年(明治三六年)に開園。古きよきモダンの香りがほのかにするわけだ。
 花の季節もいいが、初冬のいまは人影もまばらで、アラーキー流センチメンタル・ジャーニーにはもってこい。
 はたして小さなゾウさんは、草地広場にいた。その昔、写真展での表現が過激すぎるとして略式起訴を受け、東京地検からの帰り道、荒木さんを慰めてくれたのが、このゾウさんだった。そして松本楼で名物のカレーを食べて奮起した、そんな思い出の場所なのだった。
「人生には、いろいろあるんだよ」
 歴史を感じさせる松本楼のたたずまい。その横にはイチョウの大木があり、落ち葉が積もって、ふかふかの絨毯のよう。風が吹くたび、あたりは黄色い吹雪になる。こんな幻想的な光景が、大都会の真ん中で見られるとは。しかし、いかんせん銀杏の匂いが鼻を刺激する。
「思い出す ローマの女の 匂いかな」
とおもわず一句したためる巨匠だった。
 一転して、雲形池のまわりは、みごとに純和風の日本庭園になっている。
「ここで写真を撮って、『京都に旅行してきた』って言えばいいんだ」
 大胆な和洋折衷ぶりはあっぱれ。
「日比谷公園がこんなに盛りだくさんな場所だとは思わなかったな」
 心字池のベンチの下には、猫たちの小さな段ボールハウスがあった。猫の世話をするおじさんも、ここに住んでいるのだろうか。おじさんが読みかけの文庫本がベンチに置いてあった。タイトルは『行き先のない切符』。やられた。
 冷えたからだを温めようと向かったのは、岩盤浴の「スーラ」。前回の月島散歩で出会った女性がやっているお店だ。写真のバスローブ姿のひとは、精神科の女医さんだそう。湯上り美女から立ちのぼる香気に癒される荒木さんだった。


「小さなゾウさんに会いに行こう!」


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