【今回のルート】千駄木倶楽部→感應寺→ねんねこ家→玉林寺→韓家

団子坂と不忍(しのばず)通りの交差点にある赤レンガ壁の一軒家カフェ「千駄木倶楽部」で待ちあわせ。本日は、谷中根津千駄木、略して谷根千(やねせん)と呼ばれる、下町情緒を色濃く残したエリアを歩きます。
まずは、なだらかな三崎(さんさき)坂を、上野桜木方面に向かってのぼっていく。
「この坂はすごくいいね。好きだな」
道行くご婦人が荒木さんを見て「あら先生、こんにちは。お散歩ですか」とご近所さんのように声をかけるのも、この町らしい。
それにしても、どちらを向いても、お寺と墓地ばかり。歩いていると不思議な気持ちになってくる。墓地が多いというより、むしろ大きな墓地の中に、人間がちょっと間借りして住んでいるようだ。
「不思議だね、こういう町は」
死と生がすぐ隣り合わせにあるから、そのコントラストがよけいに鮮明になる。
表通りから一歩奥に入ると、とたんにひっそりとする。谷中というだけあって、谷の底を歩いてような気がしてくる。
「自分の足音しか聞こえないほど静かっていうのがいいね」
このあたりの路地は、深い。路地の多い町はいろいろあるが、この町の路地は、おもいがけなく深く入り込んでいる。
「この路地がワクワクするんだよ」
古い大木の根っこから、小さな若い枝が伸びているのをパチリ。
「こんなに静かだと、つい、生きているところに目がいくね」
通りすがりの女性に道をたずね、そのままお散歩の友になっていただく。
今日のお散歩には、目的地があった。写真集『乳房、花なり。』を一緒につくった歌人、宮田美乃里さんのお墓参り。この本には、乳がんで余命わずかと知った彼女の美しい姿と短歌が収録されている。
お墓は、感應寺にあった。桜が好きだった宮田さんのため、花屋で桜に似た可憐な花を選んだ荒木さん。花を手向けながら、またくるね、と話しかける。
お墓の向こうに沈んでいく夕陽。下校する中学生カップルのういういしい距離感。ふくよかなおまわりさんがよろけながら自転車でやってくる。とても平凡で平和な情景を、ありがたくかみしめる。
猫グッズの店「ねんねこ家」の前の路地から、玉林寺の境内を抜ける。途中で玉林寺の奥さんにもごあいさつ。
「やっと笑顔が撮れた」
と喜ぶ巨匠。散歩の楽しみは、人と出会う楽しさ。笑顔に出会えるとホッとする。やっぱりここは、いつ来ても「人町(ひとまち)」なのだった。

「この路地がワクワクするんだよ」






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