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弘兼憲史

はばたく団塊の世代

「宅死」の薦め

木村― 漫画でも小説でも、起承転結の「結」の部分が一番大事ですね。これから50代の人たちは、人生の「結」の部分、結論に、向かっていくわけですが……

弘兼― 「結」は二つあると思うんです。日本の場合、80パーセントがなんらかの形で勤め人ですから、きっちり60歳でなくとも、勤めをリタイアするときがある。それが最初のゴールだと思うんです。
 次のゴールが死なんですね。われわれはたぶん80歳ぐらいまで生きるでしょうから、あと20年、死に向かってどう生きるかというのが非常に大切なんです。
 僕はいま「きっちり死んでみせる」というのを一つの目標においているんです。それまでの人生がどんなにちゃらんぽらんでも、最後の死際を鮮やかにすれば、すべてを清算してくれると思うんです。
 2030年頃、団塊の世代がいっせいに死を迎えます。おそらく病院はベッドが足りなくなり、火葬場も満杯で待たされる。そんな混雑した病院より、僕は在宅死の薦めをしているんです。
 僕らが子どもの頃は、おじいちゃんやおばあちゃんが自宅で死んでいた時代だった。僕は「宅死」と言ってるんですけど、自分もそうやってみたい。子どもたちに人間が死んでいくところを見せてやりたいんです。
 最近の子どもたちは、死んでも、リセットボタンを押すみたいにして生き返ると思っているらしいんですが、それは実際に死ぬところを見ていないからなんですね。子どもたちに人間の死というものを教え込む。人間はこうやって死んでいくということを見せるのは、われわれ団塊の世代に与えられた役割じゃないかと思うんです。

木村― そうですね。僕もおじいさんが家で死にましたね。まだ覚えてます。

弘兼― 学校から帰ると、顔に白い布が掛けてあってね。「わあー、死んだんだ」って泣きながらもう一回じいちゃんの顔見たりね。死体を見るというのは、人間の心の形成にとってはいいことじゃないかと思っているんです。

木村― 最後は僕もかっこよく死にたいな、雪の中で前のめりに死にたいな、とずっと思っているんです。血を吐いて……(笑)。

〈後記〉対談場所のレストランに現れた弘兼さんを見て驚いた。ピシッと決めたスーツにアタッシュケース。凡そ我々が抱いている漫画家のイメージとかけ離れた佇まいに驚かされた。柔和な語り口に、凜【りん】としたメッセージ。もし眼鏡とヒゲがなかったら「島耕作」のような人なのかもしれない。(木村)

木村政雄編集長 Special Interview

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