
【今回のルート】カド→桜橋→弘福寺→鳩の街商店街→エデン


『_【_に墨】東綺譚』を求めて、やってきました向島。昭和ムードたっぷりの喫茶店「カド」に集合。名物の香ばしいくるみパンで腹ごしらえして、いざ出発。
このへんは向島芸者で知られる粋な街。ひところの賑わいこそないものの、午後になれば、着物姿のお姐さん方の行き交う姿が見られる。
まずは隅田川にかかる桜橋を歩く。桜の季節なら気持ちよかろうが、なにせ真冬の川堤は寒風吹きさらし。「桜の頃は、いいんだけどなァ」と春を恋しく思いつつ、そそくさと、もと来た道を戻る。
「寒い! 今日のテーマは、日向を求めて、『陽のあたる場所』へ、だね」
「お、冬の影だ」と言いながら、地面に伸びた建物の長い影をパチリ。
前回の谷中も路地の多い町だったが、ここも路地が網目状に張り巡らされ、まるで生き物の血管のような気がする。
向島から東向島へきて、町の空気が変わった。鳩の街はかつての私娼街。吉行淳之介の『原色の街』『驟雨』を読むと、当時の雰囲気がわかる。いまはのどかな商店街となり、長い長い路地の両脇にポツポツと店がならぶ。その中にときどき、入口が奇妙に狭く、タイル張りの外壁の独特の家が目をひくが、それがかつての娼館だ。色町の残り香に胸がさわぐ。
かと思えば、下町らしい井戸水のポンプが残る広場で、子供たちがドッジボールをしていた。話しかけながら、どんどんシャッターを切る荒木さん。「将来、何になりたいの?」ときくと「建築家と、大金持ちと、車をつくる人!」という答え。子供らしいのか、現実的なのか。ひとりの少年が「おじさん、いま何時?」ときく。「四時だよ」「よかった、まだ遊べる!」と喜んで駆け出していった。
古道具屋の前では、大胆なディスプレイに度肝を抜かれた。キッチュでジャンクな造形は、前衛ゲイジュツのよう。
「俺の写真集も、ここにあったりして」と荒木さんが冗談をポロリ。すると、なんと、ありました! しかも置いてある写真集五冊のうち二冊が荒木さんの超レア写真集。まさしく全国津々浦々まで作品が浸透している証拠。このポップ・アーティストぶりは、江戸の北斎か、平成のアラーキーか、である。
開店して四八年という、いい味にセピア色した喫茶店「エデン」で憩う。
「ジェームズ・ディーン、好きだったの?」と荒木さん。「そうなんです」とマスター。「エデン」といえば『エデンの東』の時代のこと。向島はタイムスリップの入口がいたるところにある。
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