定年後は夫婦で
「会社ごっこ」をしよう!
家庭内法人化計画の勧め。
ファイブエルの読者層である五○代のサラリーマンなら、誰もがそろそろ定年退職後のことを意識しはじめるだろう。本誌編集部にとっても、サラリーマンの第二の人生をどう設計するかは、大きなテーマ。そんな中で、定年退職後は自分の会社をまず作ったらどうだろう、というのが最近の話題の中心。何かと喧々囂々【ルビ=けんけんごうごう】討議するのだが、そんなある日、木村編集長が面白い本を持ってきた。
『全サラリーマン社長化計画』(辰巳出版刊)。「一生雇われの身でも、本当にいいんですか?」「サラリーマン法人が日本を変える!」とキャッチコピーにある。
著者は税理士で財務コンサルティング会社MMIの社長でもある高橋節男氏である。数年前に共著で『サラリーマン法人で年収150万円UP!』という本を出して話題になった人でもある。
●サラリーマン法人化とは?
サラリーマン法人化というのは、簡単に言えば、企業に勤めるサラリーマン個々人が自分の会社を作り、勤めている企業との間で業務委託契約を結んで従来通りの仕事をするというもので、それによって、それまで企業側が負担していた厚生年金保険料や健康保険料などをまとめて業務委託費としてサラリーマン法人に支払うことで、サラリーマン側は年収アップがはかれるし、法人としての経費を計上することで節税にもなるというもの。もちろん企業側、サラリーマン側のいろいろな問題はあるだろうが、こういうことに現実的なメリットがあるのなら、定年後の会社設立プランも相談に乗ってもらえそうだということで、さっそく高橋先生に会いにいった。
高橋さんは、一九四九年生まれの五八歳。八四年に税理士登録をしてこの数年来、サラリーマン法人化のメリットを説いてセミナーなども開いている。
「いやぁ、もともと私の意図するところは、税理士業界も飽和状態なので、会計事務所の新しい顧客開拓の一環として、サラリーマンは五○○○万人いますからね、新しい市場を開拓したいって思ったんですよ(笑)」とのっけからなかなか愉快な税理士先生である。「サラリーマン法人化という考え方は、かなり前からあって、要するに法人になって給料を貰うことで、給与所得控除がもう一回使えるから節税になるという基本的な考え方として出てきたんですね。でも現実問題として、サラリーマン法人を作ったときに、誰が決算等の面倒をみるのか、決算で二○~三○万円もかかってしまっては節税メリットも無くなってしまう。だから月に一万円ぐらいで記帳の代行から決算申告まで全部やれないと無理だろうと。そこで私の方でそれをやりましょうと手を挙げたわけです。月に一万円、年間一二万円程度で全部面倒をみますと。それをクリアすれば具体化できるだろうと。
次は会社側の問題。サラリーマン法人を企業側がなかなか認めませんよね、でも、本当は一番メリットがあるのは企業側なんです。なぜなら労働基準法から自由になれるから。私たちが相手にしている中小企業ですと、実際問題として残業代はほとんど出していない。それにホワイトカラーは時間ではかれる仕事ではないし、生産性を上げるのに時間ではかるのは無理がある。そういうところから自由になって、一番仕事に合った雇用形態を考えてのサラリーマン法人なんですね。個人事業主という形でもいいんですが、税務上、ふつうの業種ですとなかなか認めてもらえない。事務職とかは難しいんですね。形の上で個人事業主となっているけれど、指揮命令系統はどうなのか、名刺はどこのを使っているのか、で、結局実態は給料でしょうと見なされる。だから法人を作って契約すれば、税務上も認めざるをえない」。
さらに現代の人材の流動化というのもサラリーマン法人化には追い風である。終身雇用制が崩れつつある今、優秀な人材ほど流動化していく。そういう優秀な人材をサラリーマン法人という形でつなぎ止める。さらに能力のある人はその企業の業務以外でも能力を発揮できる場合が多いわけで、そうした業務外の能力まで取り込んでいくことで企業の活性化もはかれるわけだ。
「実際、面白い会社がありましてね、最初は全員アルバイトかパートとしての採用なんです。そして優秀な人は正社員になる。さらに優秀だとサラリーマン法人を作らせる。そして部長クラスになるとその法人を株式会社にさせて、他からの仕事も取ってきていい。それでグループとして企業を大きくしていこうという狙いなんですね」。
もう一つ、意識面でのメリットもあるのではないかと言う。それは、会社を作れば、決算をしなければならない、社会保険はどうするのかとか、いろいろ面倒なことが出てくる。そういう細かいことを一つ一つやることで、サラリーマンという企業に守られていた人間が、現実社会と向き合うことになるわけで、そこから社会の活性化も生まれるのではないかと言うのだ。
「サラリーマンは社会の煩雑さ煩わしさをすり抜けているわけで、けっこう世間に疎い。その点、中小企業の親父はしぶといですよ(笑)。リストラされて自殺なんて、とんでもないですよ。もっとしたたかさを身に付けろと言いたい。庶民は庶民で生きる知恵を身に付けていかないと、世の中も元気になりませんよ」。
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