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第10回 西荻窪界隈

【今回のルート】ダンテ→北銀座通り→女子大通り→地蔵坂→駱駝・椿→慈光→とりとり→Mu-Hung(夢飯)

 本日やってきたのは、独特のカルチャーを育む中央線沿線の西荻窪界隈、通称「西荻【ルビ=ニシオギ】」。いい感じに古色蒼然とした喫茶店「ダンテ」で待ち合わせ。
  南口仲街通のアーケードでは、天井から吊るされたピンクの象が目を引く。いかにも西荻らしい、美大生風ファッションのカップルがフレンチブルドックを連れてやってきたのでパチリ。
  北銀座通りのゆるやかな坂道をのぼり、さらに女子大通りの下り坂を地蔵坂まで歩く。風はまだ冷たいが、午後の陽射しが暖かく感じられる。
「春は近いね」
  お天気もいいし、川沿いを歩いて善福寺公園まで行きたい気もするが、今日のお目当ては古道具屋さんめぐりなのだ。
  まずは「駱駝」へ。お洒落な照明や家具が並ぶ。二階にはアンティーク着物の「椿」があり、荒木さんはパリの個展のために、粋な着物や小物をお買い上げ。
  おとなりの「海風圏」も、楽しいガラクタの宝庫だった。明治時代のものだという、馬の頭部がついた棒のおもちゃをゲットした荒木さん、さっそくまたがって遊んでいる。
  弾みがついて、「慈光」では吠えるコヨーテをかたどった置物を、「とりとり」では羽子板を購入。しばしお買い物に興じる巨匠。心はウキウキ、足取りも軽い。
「買い物が散歩のアクセントになるね」
  さっき南口のアーケードで会ったカップルと、またばったり遭遇した。
「散歩って、めぐり会うことだなァ」
  のどかな住宅街で、犬を散歩させるふたりの姿はなんともラブ&ピース。
「このふたりはきっと長続きするぞ」
  荒木さんがレンズをのぞくと、ちょうどいいタイミングで通りかかる人がいるから不思議だ。町と人が偶然に織りなす一瞬をすばやくフィルムに収めていく。
「いい町だね。住みたいな」
  荒木さんが「住みたいな」と何度も言うのは、西荻がはじめて。
  鉄製品の工房「アトリエ ベガ」が、なにやら面白そうなので覗き込んでいると、中から女の子たちが出てきた。おお、こんな可愛いお嬢さんたちが、鉄の溶接をやっているとは。もちろん、はいパチリ。
「いや~、今日は面白かった。こういう散歩もいいなァ」
  そろそろ小腹がすいてきた。荒木さんオススメの蕎麦屋「鞍馬」へ。が、品切れと同時に店じまいする人気店ゆえ、五時前だというのに本日の営業は終了。気を取り直して、やっぱり西荻といえばエスニックでしょう! ということで向かったのはアジア料理の「Mu-Hung」。スパイシーな料理を楽しみながら、本日の収穫に頬をゆるめるアラーキーだった。

荒木経惟(あらき・のぶよし)1940年東京生まれ。千葉大学工学部写真印刷工学科卒業。63年電通入社。64年、「さっちん」で第1回太陽賞受賞。71年、妻との新婚旅行を写した私家版『センチメンタルな旅』で写真家としてデビュー。国内外で出版した写真集・著書は300冊を越える。最新刊は、『東京愛情』(ポプラ社)、『アラーキーがゆく ベトナム編』(阪急コミュニケーションズ)、『エローマ、モノクローマ』(ワイズ出版)など。

文=豪徳寺春香、地図制作=データ・アトラス

トーキョー・アルキ 荒木経惟

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