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いつくしむ

 亡くなられた市川崑監督に『おとうと』(一九六〇年)という名作があった。幸田文の原作で、きかん気で病弱な弟(川口浩)を優しく見守る姉(岸恵子)の物語である。
  ぼくにも姉が二人いたせいで、あんなにもぼくのことをいつくしんでくれただろうか、と比較しつつ観たことを覚えている。境遇が違うわけだから、そんな比較自体、意味はないのだが、それほどに岸恵子の演じる姉が素敵だったのだ。
  さて、姉妹といえば、ぼくが教えに行っている大学の女子学生が作文にこんなことをつづっていた。
  お祭り好きの弟から「姉ちゃん、血祭りってどんな祭りだ?」と聞かれ困ったという。さらにまた、その弟が学校に提出するレポートを書いていたので見ると、「あいさつ」を「相殺」と書き誤り、「相殺は人間の基本だ」だと書いていたという。
「弟をいつくしんでやれ!」――ぼくは作文を読みつつ、思わず声を上げていました。

(毎日新聞専門編集委員)

近藤勝重のマンスリー・コラム

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