「釣った魚にエサをやらない」。これこそが、日本の男女関係、夫婦関係の歪みを端的に表している言葉だ。女性を魚に例えることなど言語道断であろう。その証拠に、魚が漁師を正座させて一時間も罵詈雑言を浴びせるものだろうか。もうそろそろ、男は気付かねばならない。漁師を叱るのは唯一、網元であることを。そう、妻の正体は、網元なのだ。漁師は荒海に出て、魚を釣り、その漁獲高で収入が決まるもの。収入とは亭主の生命線「小遣い」であるのは言を待たない。従って、大漁の経験が一度もない私の小遣いが時々凍結されるのは仕方がないっ。さて、全亭協の奥義に、家庭内のイザコザを一夜で解決したいなら、妻を上司と思え、とある。妻には高飛車に出る亭主だが、会社で上司にたてつく勇気があるだろうか? たとえ理不尽な予算の要求であろうと、「ハイ、かしこまりました。頑張ります」ではないか。つまり、夫婦円満の極意は、亭主が、妻の要求に、いつでも「ハイ、かしこまりました。頑張ります」の心構えが大切なのだ。参考までに言わせて頂くが、私の場合、仕事で目標を達成したことはないから、後に必ず叱責されることになる。その時は、「申し訳ございません。重々反省しております」で事なきを得るのだ。この二つの言葉さえ知っていれば、仕事同様、夫婦関係は実にうまくいく。全亭協では、家庭内のイザコザは、言葉の行き違い、もしくは、売り言葉に、買い言葉と検証されている。もし、亭主があらゆる場面で妻を上司と思えば、第一声から違うものになる。例えば、久しぶりに夫婦でレストランに行く場面で、「私はイタリアンがいいけど、あなたは何が食べたい?」とくる。初級者は「和食」と答えたりする。その後の展開は火を見るより明らかにも拘わらずだ。だが、中級者は違う。「イタリアンでいいよ」なのだ。それでも、まだまだ甘いと言わざるをえない。「イタリアンでいいよ」は、嫌々ながら従っていると悟られる恐れがあるからだ。新!亭主関白道の五段以上を持つ上級者は違う。妻の、「私はイタ……」の途中で、間髪を入れず、「イタリアンにしようよ」と言うのだ。愛妻に「私はイタリアンがいいけど……」などと長いセリフを言わせてはいけない。第一、「あなたは何が食べたい?」などという言葉を鵜呑みになどしないのだ。妻の「あなたは何にする?」は罠であり、亭主が何と答えようと、次の言葉がすでに用意されているもの。それは、「あら、そう?」であり、これを漢字で書けば、「争う?」であることが判明しているからなのだ。老婆心ではあるが、このことは貴男が浮気を疑われているケースと寸分もたがわない。妻の「全てを話したら許してあげる」は「全てを話したら首をしめてあげる」に等しく、いかなる拷問を受けようと、「しない、してない、する気もない」の浮気三原則で対抗する以外に家庭内生存率を高める方法はない、と断言しておく。ことほどさように、全亭協では、妻の心理を熟知し、家庭内のイザコザを一夜にして解決する心とワザを、四五〇も構築してきたのだ。何の役にも立たないとの非難、いや正論もあるが、門外不出の奥儀であるからして、今回披露した心構えは他言無用と心得て欲しい。もし、知ったかぶりして他の亭主に披瀝したが最後、貴殿の品性に必ず傷が付くことになるだろう(笑)。
妻の「あら、そう?」は、
漢字では「争う?」
(あまの・しゅういち)1952年、福岡県久留米市生まれ。福岡県内で70万部を発行するフリーマガジン「リセット」、タウン誌「福岡モン」の編集長。「亭主が変われば、家庭が変わる。日本も変わる」をスローガンにした「全国亭主関白協会(全亭協)」会長。主な著書に『亭主力―夫婦円満、家庭円満の新!方程式』(角川SSC新書)、『妻の顔は通知表――新! 亭主関白宣言。』(講談社)がある。
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