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性善説に立たないこと

――リスクを嗅ぎ分ける方法

 あっ、言い忘れたけど、私はアメリカで長いことデベロッパーをやっていた関係上、その道のプロ。
 なんによらず、あっという間に騙されて虎の子を霧散させない極意とは、ただひとつ。「悪いことなど、だれもしないだろう」という性善説に立たないことだ。それしかない。すなわち『性善説は死を招く』のである。と10月に発売になった私の本の題名をさりげなく宣伝しておくが、すべてを疑ってかかること。
 たとえばマンションに投資しようとする。その場合、業者の使命は決まっている。いかにコストを圧縮するかだ。デベロッパーだろうが、建築業者だろうが、ベクトルはみな同じ。できる限り安く仕上げたいのが本能。可能なら「手抜き」だってやりたい。どう転んでも、「立派なビルを建てたい。そのためならいくらかかってもかまわない」というけなげな業者はいない。もしいたら、そいつはバカだ。
 投資家は、業者のそういう心理を、まず理解しなければならない。
 全員が全員、究極のコストダウンを狙っている。放置プレイなどとんでもない。だから建築確認、検査というタガをはめているのだが、しかし、今回その内情がバレた。ご承知のとおり、有名無実だ。それもこれも、規制に強制力がないためだ。世界的に見て、強制力のない規則は意味がないのだが、我が国はずっとこれでやってきた。
 では、何に頼ってきたかというと業者のモラルだ。「ちゃんとしてね。役所は検査できないから」と、良心に期待するわけだ。しかし業者の良心は「手抜きしたい」だから、推して知るべし。早い話が、無法地帯だと思った方がいい。
 しかし恐れることはない。最初から無法者に投資する覚悟を持てばいいのだ。
 「性悪【悪に傍点】説」を前提にすれば、自分でリスクを嗅ぎ分けるクセが身につき、嗅覚が発達する。
 お分りかな? 泣きを見ないためにも、各種ファンドは「性悪【悪に傍点】説」で。異性にも「性善説」で接すると火傷するが、こればっかりはなあー。

加治将一(かじ・まさかず)小説家・投資家。1948年、札幌市生まれ。1978年に渡米。15年間、保険、貿易、不動産関係の業務に従事。帰国後、執筆開始。著書にベストセラー『借りたカネは返すな!』等のビジネス書、『石の扉』などがある他、『妻を殺したのは私かもしれない』『借金狩り』等のサスペンス小説作品も評価が高い。近著に『性善説は死を招く』がある。

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