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鼠先輩

(プロフィール)
1973年4月5日生まれ。岡山県出身。日本のムード歌謡歌手。13歳から歌手を目指す。高校中退後、本格的に音楽活動を開始。アルバイトをしながら歌謡曲中心のボーカルスクールに通い、「ザ・ブルーハーツ」のコピーバンドから活動開始。のちにBSヤングバトルに出場するも、「シャ乱Q」や「ピンク・サファイヤ」等と時期がかぶり、頭角を現さずして解散。20歳の時に上京。皿洗いなど、数々のバイトをこなしながら、ライブイベントに出演。そこで独特の歌唱スタイルに可能性を感じた音楽プロデューサーの目に留まる。2008年鼠年、ユニバーサルよりメジャーデビュー。「やらされてる感」剥き出しのキャラクターが話題を呼び、20代の若者や各繁華街を中心にブレイク。

貧乏生活に
感謝したい

 芸名とはいえ珍妙な名前である。『鼠先輩』。ところが由来を聞けば、歌手になるずっと昔から、この男、鼠先輩と呼ばれていたらしい。
「上京したての頃、バイトしていた飲食店でやることなすこと空回りしていた時期がありまして。上司からお前は二十日鼠のようだと。それ以来、バイトの後輩たちから鼠先輩と呼ばれるようになったわけです」
  岡山県で生まれ育った。子供の頃から生粋のヤンチャ者。裸足で野山を駆け回る野生児は、捕獲したザリガニやカブトムシをその場でムシャムシャ食べたりと、当時から型破りな存在だった。中学に入ると不良グループの一味に。しかし、それも長くは続かない。

鼠先輩

「同郷の甲本ヒロト(ザ・ブルーハーツ)に憧れ、音楽に目覚めました。歌のメッセージからパフォーマンスまですべてに衝撃を受け、悪いことなんかしてるよりこっちのほうが絶対面白いなと思った。子供の頃から目立つのが大好きだったので、自分には向いていたんでしょうね。以来、一〇代はずっとバンド活動に明け暮れ、そのうち東京でひと旗上げたいという漠然とした夢が芽生えましてね。二〇歳の時、何の当てもなく上京したんです」
高円寺の家賃三万円のボロアパート--それがこの男の出発点だった。模索しながらの音楽活動、そしてバイト生活。八百屋から貰った腐った野菜で食いつなぐ、極貧の日々。

「高円寺周辺にはミュージシャンや役者、漫画家などを夢見る仲間がたくさんいましてね。一緒に貧乏生活を謳歌してました。お互いバイト先からくすねてきた食料を持ち寄って、毎晩語り合ったな。みんな心が豊かでしたよ。貧しければ貧しいほど自分で発想する力が培われますから、今じゃ貧乏だったことに感謝さえしてます。よく下積みが長かったとか言われるんだけど、ちっとも苦労とは思わなかったなぁ」

やりたくないことは、
やらない

 仕事も転々とした。キャバクラから清掃員、数多の飲食店まで…、数えあげたらキリがないという。しかし飽きっぽい性格のため、どれも長続きしない。そんな中、この男には一貫して飽きずに続けられるものがあった。それが「歌」である。
「やりたいことしかやらない、それが信条。失敗してもいい。やらずに後悔するのが一番嫌いなんです。だから自分は歌い続ける。でも歌がうまいわけじゃない、カッコいいわけでもない、芸人になれるほど面白いわけでもない。するとこうゆう手段に走るしかないわけですよ。色んなものが削ぎ落とされた結果が、鼠先輩。進化したのか退化したのか」
 ライブハウスで歌っていたある日、とある音楽プロデューサーに「面白い、金になるよ!」と声をかけられたのがデビューのきっかけだった。デビュー曲『六本木〜GIROPPON〜』で「ぽっぽぽっぽ」を繰り出し、一躍脚光を浴びた。オリコン演歌・歌謡曲ランキングで初登場一位を獲得、連日テレビなどのメディアにも引っ張りダコだ。しかし本人は至って冷静。「すぐに飽きられますから」と不敵に笑う。
 男三五歳。歌への情熱は尽きることを知らない。いまだヤンチャ心の抜けない大人気ない先輩だが、そんな彼がファイブエル世代に向けて最後に物申してくれた。

鼠先輩

「五〇代以上の方々って、日本が一番元気だった時代に青春を謳歌した世代でしょ。なのに最近はあまり元気がないように見える。もっと偉そうにしていいと思うんだけどな。大人が威張らないから、ガキどもが調子に乗っちゃうんですよ。カッコつけてクールにならず、人間臭さや熱さを出して、こんな僕らを厳しく叱ってください!」
 夜の帳がおりる頃、先輩は行きつけの飲み屋へ向かった。行き先は六本木…と思いきや、「六本木なんて落ち着かなくて。やっぱり高円寺や中野が好きですね」とサングラスの奥で目尻を下げる。素顔の鼠先輩は、けっこう純朴で庶民的な男なのだ。

鼠先輩

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