「安かろう悪かろう」というのは、昔からいわれている。「貧乏人の銭失い」ともいう。自分もかなりその傾向がある。高価なものには憧れもある代りに、反発もある。高いだけじゃないかと思ったりする。金さえあれば買える、それだけのこと、と思ってむしろ安い掘り出し物に情熱を燃やしたりする。カメラにしても、時計にしても、衣裳にしても、そういう二つの傾向がある。
食べ物でもそうだ。高価なものは「高価」というそのこと自体がブランドになっている場合も多い。もちろん高価でこその味というのもあるが、その味の差と値段の差額と、それほど問題になるのかというと、馬鹿らしくなる場合が多い。でもそれは人によっていろいろで、高価である、それを食した、ということでの満足も、あるのである。それもまた、人生だ。
でもふつう、収入というのは限られている。その中でできるだけいい生活をと、まずだいたいの人はその点で苦労している。できるだけ安くていいものを、と願ってあれこれしている。それがいまの世の生活感覚というものだろう。
そこで姉歯一級建築士が登場するわけである。いやこの人に限らず、安物造りの技術者はたぶん大勢いて、このマンション不安は氷山の一角だろう。
でも「安かろう悪かろう」の構図を、これほどちゃんとした断面図のように示した事件は少ない。それで一気にパニックが広がった。 家という物件は、おそらく人の買物の中では、いちばん高額物件だろう。ベンツが高い、ロレックスが高いといっても、家に比べたらしれている。家となると、まずふつうは現金では買えない。そんな持ち合わせがないのだ。貯金を総動員しても買えない。それでも買いたいというので、世の中にはローンというものが出てくる。自分の全財産と、これから先の予定収入も全部含めて買いなさい、というのである。
そういう買物だから、その人の人生がかかっているというか、全体重がかかっている。一人の体重だけでなく、家庭といえばだいたいご夫婦だから、二人分の体重、100キロから150キロ、合計200キロというご家庭だってあるかもしれない。
パソコンの穴に隠れる鼠
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