いや横道にそれたが、とにかく人生最大の買物である。それを買ってしまってから、「じつは手抜きでした、欠陥商品でした」といわれたら、これは唖然とするだろう。ベンツやロレックスなら、まだ諦めがつく。でも家物件の場合、もうそこに住んでいるのだ。自分の体重を乗せているのだ。人生をもうそこにボルトで留めているのだ。その留めた地盤が腐って穴だらけだといわれたら、どうなるか。
第三者としては、人ごとながら、むしろこの一級建築士の身の安全が心配になる。この手抜き工事にまず手を染めたのは、この建築士だ。この人が当り前のように、悪びれずに、知っていてやったと発言する態度が凄いと思った。前にこの欄で巨人ナベツネの「たかが選手が……」という発言の歯切れのよさに言及したが、この一級建築士の、当然世間に非難されるとわかっている発言を、ほとんどこだわりもなくしゃべるところが、ある意味、例のナベツネ発言に匹敵すると思った。いまどき凄い。
この人は、「当然チェック機関で咎められると思ったけど、そのまま通ったからいいんじゃないですか」という。自分も悪いけど、誰だってみんな同じことしてますよ、というわけである。
でもこの発言のお陰で、建築構造の検査機関であるイーホームズの仕事というのが、いかにいい加減なものなのかということが、一発でわかった。何の役にも立ってないのだ。姉歯建築士としては、悪いとは思ったけど、目の前に札束があったので、一枚だけすり取った。そうしたらそこに警官がいるのに、何もいわない。それならというんで次の日も一枚だけすり取って、また一枚すり取って、たまには五枚もすり取ったけど、それでも目の前の警官は何もいわずに黙ってタバコを吸っている。というようなことらしい。その警官であるところのイーホームズは、「それは現実問題として簡単には見破れないですよ」というけど、それではチェック機関の意味がない。もとは官の仕事であったチェック機関が民営化されてこうなった。本当の民営化がされてないのではないか。
パソコンの穴に隠れる鼠
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