右を見たり、左を見たり、つまり周囲を気にしながら生きているのが人間である。しかし、年をとり、社会から一歩二歩と後退するにつれ、自分自身の世界へと入っていくのもまた人間である。
マイペースとは「my」と「pace」の和製英語だが、やがて人間はもっぱら「マイ」の世界の人となるのである。
かつて、「さんまのスーパーからくりTV」で人気だった「ご長寿早押しクイズ」は各地へ出向いて録画取りをしていた。その最中のこと、出演者の老人が突然いなくなった。一時間後に戻ってきたその老人、聞けば炭焼き小屋へ炭の焼き加減を見に行っていたとか。
近年は若いのにマイペース型が増えているようで、ぼくも憂慮している。『雪国』の作者は川端康成だが、「吉幾三でしょう」と答えた学生がいた。これだけなら物事を知らんやっちゃの話かもしれないが、こう付け加えるのを聞いて、マイペース人間だと確信した。
「彼、青森出身ですからね」
マイペース
(毎日新聞専門編集委員)
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