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箱根湯本

 さて今回の箱根湯本温泉の取材にはキティちゃんのグッズを製作しているあすなろ舎の会長さんも同行された。どこの温泉地にもキティちゃんのグッズが売られているのにはちょっと驚く。キティちゃんがご当地温泉のお湯に入っていたり、湯治客になっているようなグッズが沢山並んでいるのだ。子どもが温泉に行くというようなことはないのだが、一体誰が買うのだろう。若い旅行者なのか、それとも孫の土産なのだろうか。その辺はよくわからないが、中には箱根の寄せ木細工などのような高額キティちゃんまである。
 ぼくもこうして温泉巡りをしている生活の中で当然温泉が作品のモチーフに反映してくる。毎回ここに掲載しているように今後温泉が絵の重要なテーマのひとつになるかもしれない。また同行のMさんはぼくに各地の温泉ポスターを作らせようと考えている。別に行政に売り込むのではなく、アート作品としてポスターを制作したらどうだろうという計画なのである。
 そうなるとぼくは温泉大使みたいになって観光に協力することになりそうだ。ぼく自身はその作品の結果や効用にはあまり関心がないが、まあ面白い作品ができれば、それはそれで楽しいじゃないかという考えだ。ストレスの多い現代社会の中では人は心身ともに疲労困憊しているはずだ。そんな時、寸暇を惜しんで温泉に出向いたらどうですか、というようなサゼッションがポスターの役割であれば、それはそれでいいと思っている。
 現にぼくを苦しめていた帯状疱疹の後遺症の神経痛はたった一回の温泉で完治したという実績がある。また慢性肩こりのMさんも気がついたら肩のコリが取れていた。妻は足のかかとがヒビ割れしてザラザラしていたのがきれいに治ってしまったという。そう考えると気分転換に温泉に入るだけではなく、それ以上に病気を癒し、健康に好成績を上げてくれていることがわかる。
 さて湯本だが、成城から一時間ちょっとで行けるので、東京のおひざ元という感じで、遠くに旅行したという気分にはなれなかった。神経痛、リウマチ、各種皮膚病、ケガなどに効くという泉質はちょっと塩っぱい味がした。しかし翌朝には手の皮膚などがすべすべして白くなっているのに気づいた。一月の半ば過ぎの厳寒にもかかわらず、入浴後は体が温まり、ふとんをけっとばして、ゆかたの前をはだけたまま朝を迎えたが、ちっとも体が冷えていないのには驚いた。家で朝風呂に入ると湯冷めがして、体がゾクゾクすることがあるが、温泉の朝風呂は一日中体がほてっている。
 翌朝、箱根町長を表敬訪問することになった。ぼくがかつて箱根社会教育センターの壁画や箱根駅伝のポスターを制作したことなど町長さんは憶えておられた。自主制作で箱根のポスターを作りたいというと昔の箱根を描いた浮世絵本や写真集などをプレゼントされたので、これは大いに役立つ。

横尾忠則の温泉主義

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