木村― この映画のあちこちにぼくらの時代のモノがあふれていてなつかしかったですね。ミゼットとか。
山崎― 「あった、あった」という感覚をどれだけ盛り込めるかが、この映画の成否を決めると思っていましたから、できるだけ多くの人が「あった、あった」と思ってくれるとありがたいんです。
湯たんぽのお湯で顔を洗ったり、扇風機に「あーあー」って叫んでみたり、冷蔵庫に頭を突っ込んだとか、けっこうみなさんやってたみたいですね。みなさんに感情移入していただけて、うれしかったですね。
木村― 長嶋がデビューしたり、力道山がルーテーズに勝ったり、月光仮面とか、ヒーローがいた時代ですね。
山崎― ヒーローがヒーローでいられた時代ですね。
木村― 「事件記者」というドラマがNHKで放映されてましてね、ぼくはあの影響で新聞記者になろうとしたんですけどね……、まあそんな時代でしたね。
昭和30年代は、なぜこうして取りあげられるんでしょうかね?
山崎― ノスタルジーということもありますけど、エネルギーですね。あの頃の日本人が持っていたエネルギーを、今欲しているんでしょうね。今は先が見えない時代ですから、あの時の感覚を取り戻して、突破するためのエネルギーをこういう映画から吸収しようと思っているんじゃないですかね。
それから、ぼくらはたんに昔をなつかしむための映画をつくったわけではないんです。映画の最後で一平君が「50年先だって、ずっと夕日はきれいだよ」と言っているんですが、「50年先」ということを意識してつくったつもりですから、この映画から受けたエネルギーでこの先を乗り切っていってほしいと思います。
木村― ぼくが見たときには、同年代以上の観客が多かったんですが、そういう人たちが今抱えているのは「これから先どうなっていくんだろうな」という気持なんでしょうね。「希望を持ちたいな」という人たちの背中を押してあげるような映画になってましたね。
山崎― それから人間関係。今はメールやインターネットといった顔の見えないコミュニケーションが多いし、特に親との関係においては、昔に比べると距離感がある。この映画で、まっとうな親子の姿を見てもらいたかったんですね。鈴木一家は、お母ちゃんはおっかないけど、ここぞというときにはやさしいし、お父ちゃんも怒るけどホントに心配してくれる。そういうまっとうな親子関係を見てもらって、本当の人間の距離感を見つめ直すきっかけになってくれたらいいですね。
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