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矢沢永吉

完璧じゃなくていいじゃん

理に適った使い方を

木村― 矢沢さんのこれまでの経歴を見ていると、いつも完成する直前で壊して、また次へ行く、みたいなところがあるじゃないですか。それは意識してやってらっしゃるんですか。
 できあがってしまう恐さみたいなのがあるのか、それとも、もっと興味を引かれることが出てくるんでしょうか。

矢沢― いやあ、ひょっとしたら無意識のうちに「できあがってしまう恐さ」というのがあるのかもわからないですよ。「全部行っちゃったら、もうそこから先、何やっていいかわからなくなるのはやだよ」というのがあるかもわからないですね。
 昔、「時間よ止まれ」が売れて、久米宏さんが司会やってる「ベストテン」で七週連続ナンバーワンになったときに、「矢沢さん、テレビに出てください」「出てください」って、何度も言われたんだけど、「矢沢はテレビに出ない」ということで非常に顰蹙【ひんしゅく】を買ったんです。このまま一気にその時勢に乗っかれば、もうそのまま行っちゃうのに、ボク、逃げちゃうんですよ。なんで自分は行かないのか、その理由はよくわからない。何なのかな、何かあるんでしょうね。

木村― プロデュース感覚なんですね。
 僕は矢沢さんの本を読ませていただいて、「この人、プロデューサーもできるし、商品としての自分を客観的に見る目もある」と思いました。そういうアーチストってあんまりいないと思うんですけどね。
 ボクも長い間タレントのマネージメントをやってきましたけど、マネージャーにしたら、そういうタレント困りますもん。だって、自分で考えられて、自分でお金の計算もできて、ステージもできたら……。こちらのやることないですよ(笑)。

矢沢― 困る、困る。でもボク、マネージャーやったら一流になると思いますよ。それは思う。

木村― そういう才能は昔からなんですか。広島から出てこられて……

矢沢― いや、そのときはわからなかった。

木村― 横浜時代に……

矢沢― いや、その時もわからないです。ボク、いまでも覚えていますもん。「キャロル」でデビューして、裏でかなりパクられましたよ。最初は、何も知らない坊やで、業界のことをよく知らない、計算も何もできない。気持ちはロックで、音楽は最高で、いつまでもいいステージがやりたい、それだけです。
 後からですよ、「なんでそんなひどいことするの」「おれはこんなに真面目にやっているんじゃないの」と思ったもんね。それで気づき始めたの。「あっ、この業界はおかしいんだ」ということがわかったの。

木村― すごい真っ当ですよね。芸能界って染まっちゃったほうが楽なことっていっぱいありますよね。

矢沢― ボク、芸能界、嫌いだもん。芸能界ってあるじゃない、芸能界タッチみたいなのが。芸能界スピリットみたいなフィーリングがある。あれが嫌いなんですよ。「じゃ、おまえ、なんで芸能界にいるの」ときかれたら、「いや、きかれても困るんだよ」と。だからある雑誌でボクが言ったのは、「いや、おれは芸能界やりたかったんじゃないんだよ。ビートルズになりたくて、夜汽車に乗ってきたら、たまたまその世界が芸能界だったんだ」。それしか答えられないですよね。
 「矢沢って同じ業界人と付き合っていないよ」ってみんな言うでしょう。ほとんど付き合っていない。意識して? そうじゃないの。不器用だから付き合えないんですよ。友だちになれる人はいっぱいいると思うんですけど、何か自分の不器用さで、業界の人の知り合いがあまりいないですよね。これは良くないことなんだけども。

木村― いや、僕はそれは素晴らしいことだと思いますよ。芸能界のためにもね。やはり変わらなきゃいけないと思うんですよ、芸能界も。

木村政雄編集長 Special Interview

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