ホテルのバーで古くからの友人、Aと会った。
ブランディーをなめながらAが、ぼそっとしゃべった。
「投資話に、一口、乗せてくれよ」
加治は大きく溜息をつく。最初にそう言われたのは、もう20年以上も前。それ以来会うたびに、同じことの繰り返しだ。応じたところでAは、これまで一度も実行したためしがないのである。
様子見ばかりを20年。根っから投資向きじゃないのだから、「手を出さないほうがいい」というアドバイスしか、結局できないのだが、色気だけは枯れない。
まあ、競馬場に出向いていって、馬券も買わないのに平気で楽しんでしまうダンナ衆もいるので、それと同じなのだろう、人生どんな形にしろエンジョイできればいいのだが、こっちは疲れる。
さて、今回も海外不動産投資の続きだ。
不動産というのは、買っておくとたいがい値上がりする。忘れたころ、老後を補って余りある資産を所有している自分に気づき「なんだい、オレって意外に資産家だったのね」と、思わず幸せをかみ締めるというのはよくある。その不動産、国によって条件がすべて異なる。
加治の場合はアメリカ。それも南カリフォルニアとハワイ専門。この二ヵ所は庭みたいなもので、胸を張って話せる。種を明かせば、加治は随分前にアメリカの永住権を取得して、年に2、3度は足を踏み入れているから、滞在期間が生まれ故郷の札幌を抜いているからだけど。
高騰を続けていたアメリカ不動産、最近ようやくブレーキがかかってきたようだ。他州はもとより、南カリフォルニアでさえ地域によっては、若干下がってきている物件もある。
しかし、それでもあえて、南カリフォルニアとハワイは勧める。
単に日本から近いからというだけではない。この二つの地域には、人が集まるそれなりの秘密があるのだ。
ハリケーンと無縁だ。アメリカ大陸でこれは重要な要素。地球温暖化にともない、昨年ニューオーリンズを破壊したクラスのハリケーンは、今後も毎年やってくるという観測があり、アメリカ東南部から脱出したい人は多い。
大洪水、巨大竜巻。数十万人の大移動、お年寄りは、どこに逃げるのか?
そうなると、南カリフォルニアとハワイ。とにかく気候が極上だ。
違う角度から見ても、アメリカ経済の影響を一番受けづらいところもこの二スポットである。すなわち、この二地区の不動産投資に参加するプレイヤーが、世界中にごろごろいるのだ。
アメリカの景気が悪くなってアメリカ人が買えなくなっても、心配はいらない。日本人が買う。日本が不況になっても、今度は韓国が登場する。という具合に南米、中国、中東……と入れ替わりバイヤーが現れる。
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