ようこそ ゲストさん [ログイン]


トップページ > バックナンバー > 木村政雄編集長 Special Interview > 

  • 印刷
  • 大
  • 中
  • 小

荒木経惟 写真家

女性より写真が好きだね

『色淫女』

「色淫女」 2006木村― 団塊の世代は来年ぐらいから定年を迎えることもあって、あんまり幸せそうな顔をしている人が少ないんですが、荒木さんのように人生を愉しく過ごすには、どうすればいいんですかね。

荒木― それは20代の女と付き合うことだね。それとちょっと冒険して人妻と付き合うこと。後ろめたいことを続けないとだめだね(笑)。
 いや、『幸福写真』と同時に、「モノクロ写真になってしまった女を、淫したくなってカラー・ペインティング」した『色淫女』という写真集も出して、両極端やってるわけですよ。『幸福写真』だけでは、そこらの好々爺になってしまうから、『色淫女』なんかのおいた【おいた傍点】をしてないとだめなんです。
 『週刊大衆』で「人妻エロス」というシリーズをやってるんですけど、人妻たちと接すると、「どうしようもないね女は」と思うわけ(笑)。AV女優を撮ってるシリーズもあるけど、そうすると若い女がわかる。ともかく他者と、とくに女性と触れあうことだね。

木村― 荒木さんというと、女性というイメージがあるんですけど。どうして寄ってくるんでしょうかね。

荒木― どうしてでしょうかね。かわいいんじゃない(笑)。でも、「冷たい」って、「私より写真の方が好きみたい」って言われるよ。やっぱり女より写真が好きだね。

木村― 被写体に感情移入してしまうことはないんですか。

荒木― 写真機が肉体の一部になっているんだね。でも全身写真機にはなりたくないね。やはり部分じゃないと。そこが私のセンチメンタルで軟弱なとこだね。
 間違ったやつは、写真機自体になりたがるわけよ。そんなバカなことはやめた方がいいよ。人間を捨てて、体温を捨ててね。やはり脳味噌も肉体と思わなきゃ。そうじゃないと思ってる写真家が多いじゃない。最近はほとんどだめだね。
 それに拍車をかけているのがデジタルカメラで、表層しか写らない。時からいうと、現在しか写らない。ところがライカのようなカメラでモノクロで撮ると、静かな音が過去を感じさせ、未来も見えてくる。そう断言してもいいと思っているんだけどね。

木村― さて、66歳になられて、自称54歳だそうですけど、これからどんな人生を歩んでいかれますか。

荒木― それは今晩出会う女が決めることですよ。ハハハ……

〈後記〉対談場所に指定されたバー「ルージュ」へ行くと、仄暗い部屋の中に荒木さんが居た。キープしてあるボトルが4本もあるというのは、ここが常の溜り場なのだろう。「私に写真を究めさせるために自らの死を撮らせてくれた」、そんな伴侶に恵まれた荒木さんは幸せもの。危篤の妻を見舞った時、手にしていた花が連翹だとか。春一番、葉が出るのに先立って、濃い黄色の花をいっせいに咲かせるという。春を待たず逝ってしまった陽子さんは、いま鮮やかに才能を開花させている荒木さんを果して何処で見ているのだろう。

撮影=野村佐紀子/構成=森國次郎

木村政雄編集長 Special Interview

一覧(37件)

ファイブエルストア

[ファイブエル]バックナンバー