木村― 東大を出て、すぐに警察官になろうとは思われなかったんですか。
亀井― ぜんぜん。兄貴は法学部へ行ったから、後を行くのはいやだと思って経済学部を受けた。だから最初は別府化学工業という大阪にある会社に行ったんですよ。これは本当に大事にしてくれて、ものすごい居心地よかったんだけど、私は血の気が多いんだよ。
当時、60年安保だろう。国会に乱入されたりして、警察官が弱くてしようがない。「これはいかん。私が警察を建て直す」と。私は大体思い上がっているからな。
それで一年で辞めて東京へ帰ってきた。東大時代、私は合気道部だったから、合気道部の道場の七徳堂にもぐり込んだ。最初、失業保険で飯食ってやろうと虫のいいことを考えていた。ところが当時の職安はしっかりしていて、4月に1回だけもらって、5月に行ったらさ、「だめだ、就職の意思がない」、見破れちゃった(笑)。
それで割のいい徹夜のアルバイトをやって、朝帰ってきて、道場で稽古が始まる前にちょっと仮眠して、それで図書館に行く。それを4、5、6の三ヵ月ぐらいやったな、7月の試験だったから。経済学部だから、刑法も刑事訴訟法も憲法も何も読んだことねえんだよ。これも本屋から買ってきて、自分で読破した。
当時、試験は警察上級と国家公務員上級と二つ分かれてたんだ。小手調べに、最初にあった国家公務員上級試験を受けたんだよ。そうしたら、3番で入ってた。
木村― それはすごいですよね。
亀井― それで、各省からスカウトに来るわけですよ。だいぶ口説かれたんだよ。だけど、警察へ行こうと。
そうしておったら恐いことが起きちゃったんだよ。朝、七徳堂に帰ってきて洗面器で顔洗っていたら、洗面器がまっ赤に。血がばあーっと、もう気が遠くなるほど。私は高校2年のときにちょっと肺浸潤やっているからな、徹夜のバイトばっかりやっていたから「無理やったかな」と。しようがないから東大病院へ行ったら、「なんでもない」と言われた。もう本当に天にも昇るような気持ちでおった。
そしたらまた東大病院から電話があって、「もう一度来てくれ」。今度は「あんたはガンだ」。ひどい話でねえ。あのときばっかしはもう目の前が真っ暗。やけになって歌舞伎町で飲めねえ酒を一週間ぐらい飲んでたな。それで、いろいろ検査したら「なんともない」。それ以来、健康診断は一切受けないことにした(笑)。
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